この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
闇夜を彩るアラベスク
第6章 おとめ座の男
梅雨が開けて夏本番がやって来た。
街の片隅に古くから建っている寂れた喫茶店の奥まったテーブルに、山岡淳之介は参考書を目一杯広げて受験勉強に励んでいた。
参考書はかなり使い込まれている。
それもそのはず、淳之介は三浪していて、この参考書との付き合いも三年になろうとしているのだから参考書もあちらこちらに折り目がついていてくたびれるのは仕方なかった。
「コーヒー、おかわりしましょうか?」
高校三年生のバイトの綾川茜がコップにお水を足してくれながら淳之介に尋ねた。
彼女も高校一年生の頃からこの店でバイトを始めたので、茜と淳之介はすっかり顔馴染みになってしまった。
彼女も来年は大学受験だろうから、上手く行けば彼女と同期生になれるはずだ。
下手をすれば彼女の方が先輩となり、淳之介の片身は狭くなってしまう。
「茜ちゃん、大学を受験するの?」
「ええ、これといった目標もないんですけど、大学だけは出ておきたくて…」
「そっか…バイトと受験勉強って大変じゃない?」
「茜くんは、どこかの誰かと違って成績優秀だからねえ、現役合格間違いなしだよ」
サイフォンでコーヒーを淹れながら、喫茶店のマスターがカウンターから冷やかしの声を掛けてくる。
「そっか…現役合格間違いなしか…
こりゃ僕もうかうかしてらんないな」
「まあ、淳ちゃんが浪人を続けてくれる限り、うちとしてはお得意さんになってくれるから、それはそれで構わないんだけどね」
まるで四浪間違いなしとばかりに、カウンター内でコーヒーをカップに注ぎながらマスターはニヤニヤしていた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


