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『間違い』電話
第7章 『誤想』
ガッシャ―ン!


感情のまま投げ付けたジュエリーケースは、ガラスの花瓶にぶつかり床に散乱した。


「は……はは…何でだよ……麻里…」


どこまで映っていたかは解らない…けど、嘘だと思って欲しかった。


「そんなもんだったのか…俺たちの10年って…」


自分の落ち度だと解っていても、言い訳もさせて貰えなかった焦燥感が、何とも受け止め難い。


この10年が一瞬で、麻里に否定された気持ちになってしまう。


壁に凭れて…背中を擦りながら床に落ちる。


首を傾げて、投げ付けた箱を見た。


「やっぱり…一緒に選べば良かったかな…」


麻里の笑顔を想像して、瞼を閉じると…


光の残像か…


瞼の裏に…


三日月が浮かんだ…。


「尚子っ!」


反射的に名前を叫んだ。


カシャ…


割れたガラスが、転がった。


「はぁ…話さないと…麻里に…ちゃんと…」


諦めちゃいけない…。


こんな形で俺たちの10年を終わらせて堪るか。

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