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SAKURA(さくら)
第2章 ソメイヨシノ 1 弥生
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 ソメイヨシノが、ほぼ、満開となった――

「あ、弥生さん、おめでとうございます」

「え、あ、ありがとう」

 四月第一週の月曜日…
 人事異動発表で、夫が本部長に昇進し、社内各所で、そんな、祝いの声を掛けられる。

「弥生さんも、この前の業績もあるから、営業部長の昇進も近いですねぇ…」

「え、それは…」

「いや、マジ、ありますよぉ…」

「わたしは……別に……」

 そんなこと……

「すごいなぁ…」

「夫婦でぇ…」

 責任と、多忙が、増えるだけ…

「夫婦で、すごい出世ですねぇ…」

 出世すれば、するほどに…

「そんなこと………」

 家での会話はなくなり…

 寒くて、凍えそう―――

「あ、弥生課長…」

「あ、慶太…くん……」

「あのぉ、ちょっと、見積りいいっすか」

「うん…」
 
 ただ、わたしは…

 ひとつ…

 暖かい、居場所を、見つけた。

「あ、これね、うーん、あ、そうだ…」

「え…」
 
「今から、二人で、営業掛けちゃおうかぁ…」

「あ、いや、わざわざ弥生課長になんて…」

「ううん、いいの、あそこの係長は、わたしの云う事なら何でも聞くからさぁ…」

「あ、でも…」

「わたしが行けば大丈夫よ、上手くいくわ」

「あ、いや、でも、本部長昇進祝いなんか…」

「ううん、そんなこと…」

「で、でも…」

「どうせ、あの人…今夜も、いないから…」

「あ……そうなんす…か………」

「うん、今夜は、役員たちで銀座だって…」

「あ、はい、それじゃ…」

 そう…

 わたしは、慶太…と―――


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