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SAKURA(さくら)
第2章 ソメイヨシノ 1 弥生
 2

「タクシーで行きましょう」

 その営業先へは、タクシーで約三十分なのだが…

「すごい渋滞っすね」

「そうねぇ、でも、一時間あれば着くんじゃないかなぁ」

「そうっすね」

「うん、あそこは大丈夫だから、慌てない」

「あ、は、は…い……」

 わたしは、そう言って…
 彼の手に、わたしの手を、重ねた―――

「大丈夫……よ………」

「……はい…………」

 そして、手を握り…
 わたし自身の、スカートから伸びた、ストッキング脚に導いていく。

「だ、大丈夫………」

「…………あ…」

 そう、大丈夫―――

 あの、しだれ桜をすっかり散らせた、春雨の朝…

 あれから、わたしは…

 芽吹かせてしまい…

 また、委ねた―――

 だけど、彼は、まだ若く、彼女がいて…

 そして、わたしは、約一回り年上で、上司で、人妻で…

 どうしてよいのか、わからないみたい。

 いや…

 わたしにも…

 わからない…

 ただ、寂しくて―――

 抑えられないだけ―――

 絡めた指に、力がこもり…

 オンナとして…

 触れて、ほしい…

 見つめて、ほしいの―――

「あ…き、今日は……」

「え…」

 彼は、わたしに向き、逸れずに、見つめ…

「や、破け…て……ないん……すね………」

 そう、呟いた。


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