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SAKURA(さくら)
第1章 しだれ桜
 1

「あぁ……きれい…………」

 俺は…

 微かな春風に揺らいでいる、しだれ桜に触れようと、手を伸ばし…
 
 思わず、その艶やかなその姿に、見惚れ…

 ときめいてしまう―――


「あら、弥生さん、ダメですよぉ…」

 そんな彼女に、美卯が声を掛ける。

「え…」

「もぉ弥生さん、ダメですよぉ、そのしだれの枝に触っちゃぁ」

「え、そうなの?」

「はい、触れたら、簡単に散っちゃうんですからぁ」

「あ…ごめん」

「ほら、しだれ桜ってぇ、弥生さんみたいに繊細なんですからぁ」

 美卯は、その注意に対して、フォローのつもりもあり、そう言ったのだと思う…

「あら美卯ちゃん、そんな繊細だなんてぇ」

「え、弥生さんは、凛として、繊細ですよぉ…
 ほらぁ、この慶太なんて、さっきから、弥生さんを見惚れて、見てますからぁ」

「えっ、あっ、な、なにをっ」

 俺は、そんな、美卯の、突然の振りに、慌ててしまう…

 それは、本当だから。

「あっ、おい、美卯、な、なにを…」

「ほらぁ慶太ぁ、さっきから、口元がニヤけっ放しでぇ、すっかりぃ、見惚れてたくせにぃ……」

「あ…う……」

 図星過ぎて、二の句が継げない。

「あら、本当に、美卯ちゃんと、慶太くんは、仲が良いのねぇ…」

「あ、いや…」

 俺は、心なし、否定するのだが…

「あ、はい…もう、二年ですからぁ」

 美卯は、否定せず、そう、弥生さんに応えた。

 それは、きっと…

 美卯なりの、微かな嫉妬。

「え、そうなんだぁ、もう二年なんだぁ…」

「…………」

「はい、そうなんですぅ」

「二年かぁ…
 今が、いちばん、いい時ね……」
  
 弥生さんは、ふと、上を見て…

 いや、春の夜風に、微かに揺れる、しだれ桜を見つめ、そう呟いた。

「でも、誘ってもらってよかった…
 いい、気分転換になったわぁ……」

「そうですかぁ、なら、良かったですぅ…」

「うん、ちょっとね…
 色々と、あってさぁ……」

 今夜、仕事の終わりに…

『近くの公園のしだれ桜が、ライトアップされてますから、見に行きましょうよぉ…』
 美卯が、仕事終わりにそう誘い、三人で来たのだ。


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