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SAKURA(さくら)
第1章 しだれ桜
 2

「慶太くん、昨夜はありがとうね」

「あ、弥生さん、おはようございます」

「あれ、美卯ちゃんは?」

「なんか、昨夜の花見で、風邪ひいちゃったらしく…」
 
「あらぁ、そうなんだぁ…
 昨夜、何気に、寒かったもんねぇ」

「ま、微熱らしんすけど、自分の仕事は、一段落したからって、大事を取って休むって…」

「そうかぁ、なんか、悪いことしたわねぇ」

「え、いや、誘ったのは美卯なんだし…
 なんか、金曜だから、三連休になるからって、逆に、少し、浮かれてましたよ」

「あら、そうなんだ、でも、大したことなさそうでよかった…」
 と、弥生さんは、優しい笑みを浮かべ、そう言ってきた。

 俺は、そんな弥生さんの、優しく、柔らかな笑顔に…
 少し、ときめいていた。

「でも、今夜、お見舞いにいかないとね」

「あ、いや、美卯は実家住みなんで…」

「あら、そうなんだぁ」

「そうなんす…」

 そう…
 ましてや俺は、美卯の両親が苦手でもあった。

「じゃ、寂しいわね」

「いや、そんなことないっす」

 職場が同じ…
 それは、いつも見られているみたいで、窮屈でもあった。

 それに、美卯は、意外に、ヤキモチ焼きらしく…

『○○さんと何話してたの?』

『今日△△さんを見てたでしょう?』

『○△会社の受付の子、可愛いよねぇ…』
 等々…
 存外、細かい。

「少し、気楽っす…」

 そう、それは、本心でもあったし、そしてまた…
 こんな魅力的な、弥生さんの笑顔を、美卯の目を気にせずに見れることも、また、楽しい。

「あらぁ、そんなこと言ってぇ…」

 年上の女性に対しての憧れ…
 いや、違うかも…

 そう、あれは、少し前の…
『いやぁ、弥生さんて、堪らねぇよなぁ…』
 ふと、隣の課の同期のヤツの、その呟きが、きっかけだった。

『えっ』

『ほら、人妻特有のあの艶気がさぁ、堪んねぇじゃん…』

『た、確かに…』

『それに、あの脚線美…あのパンスト……』

『………』

 それからだった…

 急に、頭いっぱいに、弥生さんという存在感が溢れ、そして、無意識に…

 目で追うようになってしまったのだ。


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