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SAKURA(さくら)
第3章 ソメイヨシノ 2 美卯
 1

「あ、美卯ちゃん、熱、大丈夫?」

「え、あ、弥生課長、ありがとうございます。
 三日間、ゆっくり休めたんで、良くなりましたぁ…」

「うん、よかったわぁ…
 なんか、せっかく誘ってもらった夜桜のせいで、風邪引いちゃったって、慶太くんから聞いてさぁ…
 心配していたのよ……」

「あ…慶太から……」

「うん、そう…
 でも、よかったわぁ…」

「はい、心配していただいてありがとうございますぅ…」

 わたしは、この時、一瞬、心に引っ掛かる感じがした…
 でも、それは、ほんの一瞬だけ。

「お、美卯、大丈夫なんか?」

「あ、うん、三日間ゆっくり休めたからね」

「そうか…」

「うん、三日間、ゆっくりね」

「え、あ……」

「そうよ、三日間、連絡もないから、ゆっくりできたわぁ…」
 わたしは、慶太に、嫌みたっぷりに、皮肉を言った。

「あ、い、いや…ほ、ほら、仕事がさ…」

「へぇ、金、土、日の、週末なのに、お仕事だったんだぁ……」

「え、あ、うん、あ、あの…」

「…………」

「き、金曜日に、弥生課長にさ、残業頼まれちゃってさぁ…」

「へぇ……」

「…で、それが、終わらなくってさぁ……」

 目が、泳ぐ…

「…で、ま、色々と…さ……」

 慶太は、嘘が下手なオトコ…

「ふぅん……」

 でも、それが、好きな理由の一つ。

「で、でも、治ってよかったじゃん…」

 逸れたままの目、嘘の匂い…

「あ、ほら、ネクタイ曲がってるわよ」

「あ…」

「それにぃ、毎日同じのしてさぁ…」

 わたしは、そう呟きながら、ネクタイを締め直してあげる…

「こ、これ、美卯に貰ったヤツだからさ…」

「だからってぇ…
 毎日、毎日さぁ、同じネクタイしないの」

「あ…う、うん…」
 こういう、子供っぽいところも、好きな理由の一つでもある。

「………っ」

 ――のだが……

 その締め直しているネクタイから…

 え…
 
 微かな、香りが…

「………」

 ムスクの甘い香りが…

「…ぇ……」

 指が、止まる…

「………」

 この香りは…
 
「………」

 慶太を見る…

「……っ」

 逸れる目…

「………」

 もう一度、ネクタイに触れる。

 この香り…

 知ってる―――

 

 
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