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SAKURA(さくら)
第3章 ソメイヨシノ 2 美卯
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 慶太は営業一課…

 わたしは、営業二課…

 課は違えど、フロアは同じ。

 だから、わたしのデスクからは、慶太の斜め後ろがよく見える…

 そして、課長席は、正面に位置する。

 それからのわたしは、二人から、目が逸らせなくなってしまった―――

 視線を上げれば、そこにいる…

 逸らしても、また戻る…

 なにかを、確かめるみたいに。

 騒めきは、消えないまま――


 満開だったしだれ桜が、春風にほどけ…
 
 季節は、ソメイヨシノへとうつろう―――

 そんな時だった…

『美卯さん、部長が、お呼びです』

 不意に、名前を呼ばれる。

『……はい』
 
 呼ばれた相手は、営業統括部長…

 弥生課長の、夫。
 
『例の企画書、見たよ』

『え…』

 それは、わたしが先に提案した、某メーカーとのタイアップ企画。

『四月から、事業計画部に来ないか』

 それは―――

『本部長直属になるから…
 キミの企画を中心に推して行こうとね』

『え…』

 事業計画部への異動…
 
 本部長直属…

 四月から…

 それは、正に、青天の霹靂―――

 そのはずなのに…

 胸の奥で、別の波が立つ。

『はい…四月から、よろしくお願いします』

 そして、目の前の部長から微かに漂う、微かな、残り香…

 シャネル…

 そして、わたしを、逸れずに見つめてくる、この秘書からも―――

「………」

 ムスクとは、違う―――
 

 小さな濁りが、ゆっくりと蠢き…

 しだれ桜は、散り…

 ソメイヨシノが、名を得た刹那…

 静かな水面に…

 波紋が広がってきた―――



 
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