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SAKURA(さくら)
第3章 ソメイヨシノ 2 美卯
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「昨夜はごめんね…
 久しぶりにカラオケで盛り上がっちゃってさぁ、電話に気付かなかったの…」

「あ、うん、そうだったんだぁ…」

 それは嘘…

 今朝まで、部長と――

「今夜は、大丈夫よ」

「おう、夜桜に行こうぜ」

 ふと、視線を奥へと流すと…

「………」

 また…

 弥生課長が、こちらを、見ていた――

 ただ今日は、目が合った瞬間…

 慌てて、目を逸らしてきた。

「うん、でも、定時で上がれそうなの?」

「え、あ、今日は大丈夫かな…」

「そう、よかったぁ…
 あ、ネクタイ似合ってるね」

「お、そうかぁ…」

 すると…

 弥生課長は、スッと席を外し、歩き去っていく。

「じゃ、楽しみ…」

「うん…」

 異動まで、あと二日…

 また、何かが小さくきしみ、ゆっくりと、ひびが広がっていく――


「うわぁ、すごい人ねぇ…」

 その公園は、夜桜客で、溢れていた――

 池の周りにびっしりと立ち並ぶ、数えきれない屋台…

 酔客の喧騒…

 溢れる人々…

「ね、ねぇ…」

「え…」

「もういいわ…帰ろう……」

「え、もういいのか?」

「………」

 わたしは、この人いきれに、酔いそうになってしまう――

「うん、慶太の部屋に行きたい…」

「あ…」

「二人に…なりたい……」

「あ、うん……」

 それは、本当の願い…

 そして、昨夜までの、ぬくもり――


「あ…慶太、や、し、シャワーを…」

「はぁぁ…み、美卯、いいんだ…」

「え、や、で、でも…」

「い、いいんだ…」

 慶太はそう呟きながら、わたしの脚に顔を寄せてくる…

「あ、や、で、でも…」

「ふうぅ、いいんだ、これがいい…」

 そして、唇を、舌でストッキング脚を愛でてくる…

「や、やん、あ、汗かいちゃったから…」

「い、いいんだ…」
 
「や、あ、あん…」

 いつもと、違う…

 ううん…

 慶太は、変わった…

 わたしを、見て、触れてはいない――

「あぁ…」

 何かが、更にきしみ、ひびが広がる…

 いや…

 それが、何かなのかが、今、わかった…

 わたしの中に、別の誰かが、いる。

 触れられるたび…

 少しずつ、増えていく―――

 わたしの匂いじゃ、なくなっていく…


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