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SAKURA(さくら)
第3章 ソメイヨシノ 2 美卯
10
「昨夜はごめんね…
久しぶりにカラオケで盛り上がっちゃってさぁ、電話に気付かなかったの…」
「あ、うん、そうだったんだぁ…」
それは嘘…
今朝まで、部長と――
「今夜は、大丈夫よ」
「おう、夜桜に行こうぜ」
ふと、視線を奥へと流すと…
「………」
また…
弥生課長が、こちらを、見ていた――
ただ今日は、目が合った瞬間…
慌てて、目を逸らしてきた。
「うん、でも、定時で上がれそうなの?」
「え、あ、今日は大丈夫かな…」
「そう、よかったぁ…
あ、ネクタイ似合ってるね」
「お、そうかぁ…」
すると…
弥生課長は、スッと席を外し、歩き去っていく。
「じゃ、楽しみ…」
「うん…」
異動まで、あと二日…
また、何かが小さくきしみ、ゆっくりと、ひびが広がっていく――
「うわぁ、すごい人ねぇ…」
その公園は、夜桜客で、溢れていた――
池の周りにびっしりと立ち並ぶ、数えきれない屋台…
酔客の喧騒…
溢れる人々…
「ね、ねぇ…」
「え…」
「もういいわ…帰ろう……」
「え、もういいのか?」
「………」
わたしは、この人いきれに、酔いそうになってしまう――
「うん、慶太の部屋に行きたい…」
「あ…」
「二人に…なりたい……」
「あ、うん……」
それは、本当の願い…
そして、昨夜までの、ぬくもり――
「あ…慶太、や、し、シャワーを…」
「はぁぁ…み、美卯、いいんだ…」
「え、や、で、でも…」
「い、いいんだ…」
慶太はそう呟きながら、わたしの脚に顔を寄せてくる…
「あ、や、で、でも…」
「ふうぅ、いいんだ、これがいい…」
そして、唇を、舌でストッキング脚を愛でてくる…
「や、やん、あ、汗かいちゃったから…」
「い、いいんだ…」
「や、あ、あん…」
いつもと、違う…
ううん…
慶太は、変わった…
わたしを、見て、触れてはいない――
「あぁ…」
何かが、更にきしみ、ひびが広がる…
いや…
それが、何かなのかが、今、わかった…
わたしの中に、別の誰かが、いる。
触れられるたび…
少しずつ、増えていく―――
わたしの匂いじゃ、なくなっていく…
「昨夜はごめんね…
久しぶりにカラオケで盛り上がっちゃってさぁ、電話に気付かなかったの…」
「あ、うん、そうだったんだぁ…」
それは嘘…
今朝まで、部長と――
「今夜は、大丈夫よ」
「おう、夜桜に行こうぜ」
ふと、視線を奥へと流すと…
「………」
また…
弥生課長が、こちらを、見ていた――
ただ今日は、目が合った瞬間…
慌てて、目を逸らしてきた。
「うん、でも、定時で上がれそうなの?」
「え、あ、今日は大丈夫かな…」
「そう、よかったぁ…
あ、ネクタイ似合ってるね」
「お、そうかぁ…」
すると…
弥生課長は、スッと席を外し、歩き去っていく。
「じゃ、楽しみ…」
「うん…」
異動まで、あと二日…
また、何かが小さくきしみ、ゆっくりと、ひびが広がっていく――
「うわぁ、すごい人ねぇ…」
その公園は、夜桜客で、溢れていた――
池の周りにびっしりと立ち並ぶ、数えきれない屋台…
酔客の喧騒…
溢れる人々…
「ね、ねぇ…」
「え…」
「もういいわ…帰ろう……」
「え、もういいのか?」
「………」
わたしは、この人いきれに、酔いそうになってしまう――
「うん、慶太の部屋に行きたい…」
「あ…」
「二人に…なりたい……」
「あ、うん……」
それは、本当の願い…
そして、昨夜までの、ぬくもり――
「あ…慶太、や、し、シャワーを…」
「はぁぁ…み、美卯、いいんだ…」
「え、や、で、でも…」
「い、いいんだ…」
慶太はそう呟きながら、わたしの脚に顔を寄せてくる…
「あ、や、で、でも…」
「ふうぅ、いいんだ、これがいい…」
そして、唇を、舌でストッキング脚を愛でてくる…
「や、やん、あ、汗かいちゃったから…」
「い、いいんだ…」
「や、あ、あん…」
いつもと、違う…
ううん…
慶太は、変わった…
わたしを、見て、触れてはいない――
「あぁ…」
何かが、更にきしみ、ひびが広がる…
いや…
それが、何かなのかが、今、わかった…
わたしの中に、別の誰かが、いる。
触れられるたび…
少しずつ、増えていく―――
わたしの匂いじゃ、なくなっていく…

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