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SAKURA(さくら)
第4章 ソメイヨシノ 3 統括部長
 3

「今夜……も……遅くなる……」

「………はい…」
 お互いに、逸らし、言葉を交わす。

「役員たちが、祝うらしい……」

「………はい…」

 いつからだろうか…

 お互いに、視線を合わさなくなってしまったのは――

「………なんか、弥生も忙しそうだな…」

「…あら…気にしていただけてたの?」

「…あ、当たり前だろう……」

「そう…でしたか……」

「もちろんだよ…」

 いつからだろうか…

 言葉に、棘が生えてきたのは――

「新年度なんで…若い社員と…
 新規顧客に、同行営業をね……」

「そ、そうか…」

「はい…」

「うん…」

「近い内に、良い報告が……」

「……そうか、あ、あまり……」

「え…」

「……あ……い、いや……」

「………」

「いや、いいんだ………」

 いつからだろうか…

 仕事の話ししか、しなくなってしまったのは――

「あ、あま……」

「え…」

「あ、いや……」

「……」

「うん…」

「あなた…も……ね……」

 いつからだろうか…

 素直な言葉を、話せなくなってしまったのは――

 ピンポーン……

「タクシー……来ましたわよ…」

「あ、うむ、じゃ…」

 気付いたときには…

『いってきます』
 も、言わなくなってしまった――

 バタン……

「ふうぅ…」

 タクシーに座り…

 思わず、ネクタイに触れてしまう――

 社内での異例の、スピード出世…

 本来なら、誇らしく、喜ばしいはずなのに…

 出世すれば、するほどに…

 ますます…

 互いの心が離れ…

 隙間風が、止まらない―――


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