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SAKURA(さくら)
第7章 八重桜 3 本部長
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「また、新規取ってきたらしいな」

「え、あ…」

 朝食時…

「報告が上がってきていたからさ…」

「あ、は、はい、部下が…」

 まだ、私たちは、朝食を一緒に摂っていた。

「え……いや………」

「部下の若い子が…」

 今となっては、この時間だけが、唯一の接点の時間…

「あ…いや…そうか……」

「あ…はい……」

 報告では、弥生との同行営業の成績と聞いていた…

 そして、決して視線は、交じらない。

「なんか…あ、あなたも大きなタイアップが決まったとか……」

「え、あ…」
 
「社内で、噂になってますよ」
 
「え、噂って?」

 コーヒーカップが、微かに震える…

「……え、あ、大きな契約だって……」

 一瞬、噂と聞いて、焦ってしまう。

「あ…うん、こっちも、引き上げた若い子のタイアップ計画が上手くいってね…」

「あ…そうなんですね……」

「そう、ほら、この前同行した…さ……」

「あ……あの時の…LINE気付かなくって……」

「あ…うん……」

 これだけ言葉を交わしても…

 視線は、一度たりとも交わらない。

 そして、もう、心も――

「…あ、また、明日から同行するから……」

「………え、あ、はい…」

 今さらの…

「わ、わたしも…」

「………」

「週末前に、同行する…かも……」

「そうか……」

「……はい」

「成績上げれば、来月辺りには…」

「え……」

「部長に…推すから……」

「え、あ……は、はぁ…」

「上げるから…」

「あ、わたし…それは…別に……」

 やはり、もう、交わらない…

「い、いや…」

「お、オレが、上げたい…から……」

「……」

「……」

 その時、迎えのクルマのクラクションが鳴った。

「じゃ、お先に…」

「はい…」

 二人同時に立ち上がる。

「…はい…カバン」

「…あ…うん…」

 手渡され、受け取る二人の左手には…

 お互いに、指輪が無かった――

 
 
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