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シアター"名画座"で逢いましょう
第15章 二組のカップル
タクシーをアプリで呼び出すと、偶然にも日菜子がこの街へ駆けつける時に利用したタクシーがやって来て、朝倉と日菜子が乗り込むと、タクシーの運転手は安堵の表情を浮かべた。
「お客さん、良かったね、間に合ったんだね」
日菜子に急いでくれとお願いされても、タクシー会社の規定で法定速度を無視して飛ばすわけにも行かず、間に合うかどうか運転手も気にかけてくれていた。
「あ…夕方に利用したタクシーの運転手さん?」
「はい。あのあと、お嬢さんが待ち合わせに間に合うかどうか、ずっと気がかりだったものですから」
あなたに会うときに私を送り届けてくれた運転手さんなの。
そのように朝倉に説明すると「ご心配をおかけしたようで…
でも、このように無事に会瀬も済ませることが出来ましたし、たとえ彼女が何時間遅れようとも、僕は待ち続けるつもりでしたけどね」と朝倉は歯の浮くような台詞を口にした。
「いい男だねえ、お嬢さん、こんないい男は滅多にいないから大事にした方がいいですよ」
運転手にそんなことを言われなくても、離しはしないんだからと
日菜子はきつく朝倉の手を握りしめた。
ほどなくしてタクシーは日菜子のマンションにたどり着く。
タクシーのヘッドライトが先に停車している他のタクシーの姿を浮かび上がらせる。
そのタクシーから見覚えのある男が降り立った。
見間違うはずがない、タクシーから降り立ったのは日菜子の夫である広であった。
広は降り立ったタクシーに向かって「じゃあね」と手を降っている。
『知り合いのドライバーなのかしら?』日菜子たちの乗ったタクシーも広が降り立ったタクシーの後ろに停車しようとしている。
今、夫の広と鉢合わせになるのはマズイ。
日菜子一人なら、言い訳はなんとでもなるが、このタクシーには朝倉が同乗しているのだからバツが悪い。
「運転手さん…もう少し先で降ろしてもらえますか?」
「ここでなくてもいいんですか?」
日菜子たちを乗せたタクシーは広が降り立ったタクシーを追い越そうとしていた。
そんな時だった、広が降り立ったタクシーから追いすがるように一人の女性が飛び出して、夫の広に抱きついたのだ。

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