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シアター"名画座"で逢いましょう
第15章 二組のカップル
「何を殊勝に頭を下げてんのよ!この泥棒猫!!」
泥棒猫と呼ばれて、事を荒立てたくなかった十和子もカチンと来て「あら~、どこかの誰かに色気もかわいげもないから飽きられてんのがわからないなんて可哀想な女ね」と売り言葉に買い言葉で十和子は日菜子を罵る。
「ちょ、ちょっと二人とも冷静になりませんか?」
二人の女が言い争っているのを無視するわけにも行かず、自分が出ていっては話が余計に拗れるとは思ったが、警官としての正義感で見過ごすことも出来ず、朝倉はタクシーから飛び出して仲裁に入った。
「何だ、君は!」
思いがけず見知らぬ男が加わったことで夫の広が怪訝な顔をした。
「この人は朝倉さん。私の彼氏よ!」
日菜子は逆上しているものだから、友人とでも言っておけばいいのに、朝倉を彼氏だと言ってしまった。
「彼氏?彼氏だとぉ!?」
女同士の争いにオロオロしていた広だったが、妻の日菜子から「彼氏」という言葉が出て、夫の広は朝倉を睨み付けた。
「ここでこうして言い争うってのは近隣の方を起こしてしまいます。どうですか、ここはひとまず部屋に戻って冷静に話し合いませんか?」
落ち着いた朝倉の口調に、頭に血が登りかけた夫の広も冷静さを取り戻す。
こうして二組の男女は日菜子の部屋で対峙することとなった。
対のソファーに腰を降ろしてからも、お互いがお互いを牽制しあって、口を開こうともしない。
重い空気だけが張り巡らされてゆく。
「お、お茶でも淹れますね」
場の空気に居たたまれなくなった日菜子が席を立ってキッチンに逃げ込む。
それを機に夫の広が朝倉を睨み付けながら「妻の日菜子は君を彼氏だと紹介した…それは間違いがないのかい?」と今にも殴りかからんばかりに拳を握りしめながら問い詰める。

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