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エロ本を拾っただけなのに2 ~熟母・香代子~
第11章 《蘇る女、抗えぬ本能》
──【2023年 秋】

あの日。白昼のリビングで、身重の娘が夫の巨根を咥え込み、同年代の男の底知れぬ精力を見せつけられたあの日を境に、香代子の日常は決定的に狂い始めていた。

これまでは、娘夫婦の暮らす905号室を訪れる際、香代子が身だしなみなど気にしたことは1度もなかった。優香の母親として、時には化粧もせず、洗い物をした後のくたびれたエプロンをつけたまま、タッパーに入れたおかずを持って合鍵で入っていくことも珍しくなかった。
しかし今、香代子はそのかつての自分の無頓着な振る舞いを思い出すだけで、顔から火が出るほどの強烈な羞恥心に襲われるようになっていた。

(あんな、女を捨てたような惨めな格好で……あの人の前に出ていたなんて)

鏡の前に立つ香代子は、ため息をつきながら自分の顔を見つめた。
そこにあるのは、夫に裏切られ、生活に疲れ果てていた中年女の顔だ。しかし、香代子の手は無意識のうちに化粧水をとって肌を潤し、ファンデーションを丁寧に塗り広げていた。以前なら近所のスーパーに行く程度の薄化粧すら億劫だったのに、今は鏡の前で、ほんのりと色づく口紅の選び方にすら迷っている自分がいる。
着ていく服も変わった。体型を隠すようなゆったりとしたチュニックはクローゼットの奥へ押し込み、少しでも胸元や腰のラインが綺麗に見えるブラウスやスカートを選ぶようになっていた。

理屈ではないのだ。
905号室へ行くという行為が、いつの間にか香代子の中で「強烈な『牡』の縄張りに足を踏み入れる」という、本能的な緊張感にすり替わっていた。

インターホンを鳴らす指先が、わずかに震える。
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