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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第109章 生贄のプロローグ ―汚されたルージュ、奈落への署名―
何度も執拗に口をすすぎ、乱れたボウタイブラウスの襟元を整えてから、澪は意を決して洗面所を出た。
俯きがちにオフィスのフロアへと戻ろうとしたその時、廊下の陰で待っていた雄一が、素早く澪の側へと近寄ってきた。
雄一は、鬼頭がただの業務連絡のために澪を呼び出したのではないと、最初から分かっていた。密室となった社長応接室で、またあの男が澪に何か卑劣な真似をするために呼んだのだと、気が気ではなかったのだ。
澪の姿を捉えた瞬間、雄一の息が止まった。
「澪……」
雄一の視線は、澪の顔に釘付けになった。朝、家を出るときにあれほど綺麗に塗られていた、ピンクの照りのあるルージュが、彼女の唇から完全に消え去っている。
(また、キスをされたんだ……)
それだけではなかった。澪の頬は異様に赤く上気し、呼吸もまだわずかに乱れている。ただキスをされたというレベルではなく、もっと露骨で、性的な何かをその身に施されたのだと、雄一は瞬時に理解した。
自分の知らない密室で、妻の身体がまたしても別の男に蹂躙された。その生々しい事実が、雄一の胸をナイフのように切り裂く。だが、オフィスという公の場で、これ以上追及することも、彼女を抱きしめて慰めることもできない。
雄一は震える拳を握りしめ、消え入りそうな声で問いかけるのが精一杯だった。
「澪……大丈夫、かい……?」
かける言葉は、それしかなかった。己の無力さと悔しさに身を焦がしながら、ただ痛々しく妻を見つめることしかできない。
澪は、雄一の苦しげに歪んだ表情を見て胸を締め付けられながらも、必死で平気なふりをして、微かに微笑んでみせた。口の中に残る消えない異質な味と、下着の奥にまだ残る熱い愛撫の余韻を必死に押し殺しながら、静かに首を振る。
「ええ……大丈夫。大丈夫よ、雄一さん」
そう答えるしかなかった。これ以上、雄一に余計な苦しみを与えたくはなかった。
「それじゃあ、仕事に戻りましょう。まだ、残っているから……」
「……ああ。そうだね。戻ろう」
二人はそれ以上言葉を交わすことなく、それぞれのデスクへと戻り、何事もなかったかのように再び仕事に向かった。
俯きがちにオフィスのフロアへと戻ろうとしたその時、廊下の陰で待っていた雄一が、素早く澪の側へと近寄ってきた。
雄一は、鬼頭がただの業務連絡のために澪を呼び出したのではないと、最初から分かっていた。密室となった社長応接室で、またあの男が澪に何か卑劣な真似をするために呼んだのだと、気が気ではなかったのだ。
澪の姿を捉えた瞬間、雄一の息が止まった。
「澪……」
雄一の視線は、澪の顔に釘付けになった。朝、家を出るときにあれほど綺麗に塗られていた、ピンクの照りのあるルージュが、彼女の唇から完全に消え去っている。
(また、キスをされたんだ……)
それだけではなかった。澪の頬は異様に赤く上気し、呼吸もまだわずかに乱れている。ただキスをされたというレベルではなく、もっと露骨で、性的な何かをその身に施されたのだと、雄一は瞬時に理解した。
自分の知らない密室で、妻の身体がまたしても別の男に蹂躙された。その生々しい事実が、雄一の胸をナイフのように切り裂く。だが、オフィスという公の場で、これ以上追及することも、彼女を抱きしめて慰めることもできない。
雄一は震える拳を握りしめ、消え入りそうな声で問いかけるのが精一杯だった。
「澪……大丈夫、かい……?」
かける言葉は、それしかなかった。己の無力さと悔しさに身を焦がしながら、ただ痛々しく妻を見つめることしかできない。
澪は、雄一の苦しげに歪んだ表情を見て胸を締め付けられながらも、必死で平気なふりをして、微かに微笑んでみせた。口の中に残る消えない異質な味と、下着の奥にまだ残る熱い愛撫の余韻を必死に押し殺しながら、静かに首を振る。
「ええ……大丈夫。大丈夫よ、雄一さん」
そう答えるしかなかった。これ以上、雄一に余計な苦しみを与えたくはなかった。
「それじゃあ、仕事に戻りましょう。まだ、残っているから……」
「……ああ。そうだね。戻ろう」
二人はそれ以上言葉を交わすことなく、それぞれのデスクへと戻り、何事もなかったかのように再び仕事に向かった。

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