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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第35章 遠い密室で堕ちる
「……場所を変えよう。下の階に、プライベートで使えるスイートルームを抑えてある。今後の具体的な進め方について、もっと踏み込んだ話をしなければならない」
鬼頭の言葉に、澪はわずかに肩を揺らしたが、あくまで「仕事の続き」としての提案だと自分に言い聞かせ、彼に従った。エレベーターを下り、重厚な扉の向こうにある静寂に包まれた一室に入ると、鬼頭は澪をソファに座らせ、自らはその正面に立った。
「来週末、おそらく神楽坂さんは再び商談と称して君を呼び出す。それまでに何度か連絡もあるだろう。……彼は今日、君がボタンを外した姿を見ただけで、あれほど理性を失いかけていた。本契約を餌に、次は間違いなく、卑猥な要求を突きつけてくるはずだ」
鬼頭は苦渋を滲ませるように視線を落とし、それから意を決したように澪を見つめた。
「正直に言えば……俺は、君に惚れきっている。一度、男女の関係になって君の奥深い魅力に触れてからというもの、さらに強く、君を独占したいという衝動に引き込まれてしまった。君が雄一くんの大切な妻であると理解しているからこそ、それを悪いと思って、君を秘書として雇ってからはずっと、抱きたい気持ちを必死に我慢してきたんだ」
鬼頭の声は、一人の男としての切実な響きを帯びていく。
「だが、現実は残酷だ。あの男に、性的な奉仕を強いられるところまで事態が来てしまった。それが、たまらなく悔しい。惚れきった女が、俺以外の男にそんな風に扱われるなんて……。だから、澪。今夜だけは、俺のわがままを聞いてくれないか。他の男に汚される前に、俺の腕の中で、俺だけのものになってほしい」
鬼頭はゆっくりと膝をつき、澪の手を両手で包み込んだ。
「経営者として、会社を救うために君を利用しなければならない自分も憎い。いざとなったら『生理だ』と言って逃げていい。奴もそこまでは踏み込めないはずだ。……だが、今日、神楽坂さんをあそこまで魅了した君を、今はどうしても抱きたいんだ」
「鬼頭さん……」
澪は、上司としての冷静な判断と、剥き出しになった彼個人の情熱の狭間で激しく動揺していた。これほどまでに自分を求め、苦悩する鬼頭の姿に、彼女の中の「女」が抗いがたく共鳴し、鬼頭の思いを受け入れようと静かに瞳を閉じた。夜の闇が二人を包み込み、雄一の待つ家は、遠い別の世界の出来事のように思えていた。
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