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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第13章 二人のファースト・デイト~求めていた温もりと約束~③
時計が11時を回った頃、
彩香は名残惜しそうに健治さんのマンションのリビングで立ち上がった。

「……もう、こんな時間ですね。タクシーで帰ります」

健治さんは彩香の後ろからそっと抱き寄せ、背中に自分の胸をぴったりと預けた。
口ひげを彩香の耳に軽く触れさせて、低く優しい声で囁いた。

「もう少しだけ、ここにいろよ」

彩香は彼の大きな手に自分の手を重ね、甘えるように体を預けた。

幸せと寂しさが混じり合った吐息が漏れる。

二人はそのまましばらく立ち尽くし、今日一日の思い出を静かに語り始めた。

「……今日、本当に幸せでした。みなとみらいで待ってたら、
健治さんが改札から出てきてくれた瞬間、心臓が飛び出そうでした。
初めて手をつないだとき、手が震えて……でも健治さんが優しく指を絡めてくれて、
すごく安心したんです」

彩香は小さく笑いながら続けた。

「美術館で健治さんが真剣に絵を見てるところを見たら……思わず
『お父さんみたい』って言っちゃって。
すごく恥ずかしかったけど、健治さんが笑って抱きしめてくれたの、忘れられません」

健治さんは低くくすりと笑い、彩香の腰を抱く手に少し力を込めた。

「山下公園で彩香が自分からキスしてくれたのも嬉しかったぞ。
あと、中華街で後ろから抱きながら歩いたとき、
彩香が俺の腕に頰をすりすりして甘えてた顔……可愛くて仕方なかった」

「……もう、言わないでください。恥ずかしい……」

彩香は耳まで赤くなりながらも、幸せそうに目を細めた。

健治さんは彩香をゆっくりと振り向かせ、
口ひげの目立つ渋い顔を近づけて額に優しくキスをした。

「俺も最高だった。お前と一日中手を繋いで、抱きしめて、甘えさせて……ずっとこうしていたいと思ったよ」

彩香の瞳がじんわりと潤み始めた。

「……寂しそうに、そして幸せそうに」

彩香は健治さんの胸に顔を埋めながら、震える声で呟いた。

「健治さんとこうして幸せでいたい……ずっと、ずっとこうしていたいのに……」

少し間を置いて、彩香は涙目になりながらも無理に微笑もうとした。

「……明後日、会社でまた会えるから……我慢しますね」

声の端々が震え、目尻に溜まった涙が光っていた。恋愛未経験で一途な彩香にとって、
今日のような甘い一日を過ごした後の別れは、胸が締め付けられるほど切なかった。
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