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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第44章 逃げ切れない平日の甘い攻防~水曜~昼編
同日 13時5分 神奈川支店 13階 企画部フロア 

健治はマックで買ったアイスコーヒーの紙カップを片手に、
ゆったりとした足取りでフロアに戻ってきた。

口ひげの端がわずかに上がったまま、満足げな表情を浮かべている。

(……逃げた先でまた赤くなってたか。
パンダのスタンプ、震え方が可愛すぎた)

フロアに入ると、自然な流れで彩香の席の後ろの通路を歩き始めた。
他の社員と軽く会釈を交わしながらも、視線は彩香の背中に固定されている。

彩香は森川さんと話している最中だったが、
後ろから近づいてくる聞き慣れた足音に敏感に反応した。

(……この足音……健治さん……!)

背筋がぴんと伸び、肩が小さく強張る。
森川さんとの会話に集中しようとするが、声が少し上ずってしまう。

健治は彩香のすぐ後ろで足を止めた。
そのまま軽く身を屈め、彩香の横顔を覗き込むような仕草をする。

大きな手でコーヒーカップを持ち、もう片方の手は軽くポケットに入れたまま、
意地悪くも優しい眼差しで彩香の赤くなった耳元を眺めていた。

彩香はそれに気づいた瞬間——

(……後ろに……立ってる……!覗き込まれてる……!?)

顔から一気に汗が浮かび、額や首筋を伝う。
耳まで真っ赤になり、背中がびしょびしょに汗ばむのを感じた。

「中山さん? どうしたの? また顔赤いよ?」

森川さんが心配そうに聞いてくる。
彩香は慌てて手を振った。

「だ、大丈夫です! ちょっと……暑くて……
フルーリー飲んできたのに、まだ熱いですね……はは……」

声が明らかに震えていた。

後ろに健治さんが立っている気配が強烈に感じられ、
彩香は必死に前を向いたまま小さく縮こまる。

健治は彩香の後ろで低くくすりと笑いを堪え、
そのままゆっくりと自分のデスクの方へ歩き去った。

コーヒーカップを軽く回しながら、満足げに目を細めている。

(……汗かいてるな、可愛い。
逃げても、ちゃんと俺の視界の中にいるじゃないか)

彩香は後ろの気配が遠ざかるのを感じて、ほっと大きく息を吐いた。

しかし額の汗を拭う手が震え、
好き避けと甘い緊張の波が再び胸の中で渦巻いていた。
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