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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第44章 逃げ切れない平日の甘い攻防~水曜~昼編
同日 13時55分 神奈川支店 13階 企画部フロア

彩香がようやく自席に戻ってきた。
ほっと息をついたのも束の間——

「中山」

低く渋い声がすぐ後ろからかかった。

「ひゃっ……!」

彩香の肩が大きく跳ね、椅子ごと体がびくんと震えた。
振り返ると、そこに健治さんが立っていた。

表面上は至って真面目で落ち着いた課長の表情だ。

「……午後の作業の件で少し確認したい。面談室じゃなくてここでいいか?」

彩香は心臓をバクバクさせながらも、
「仕事の用事だ」とわかり、ほっと胸を撫で下ろした。

「は、はい……大丈夫です……」

健治さんは彩香のデスクに軽く手を置き、資料を指差しながら、
周囲に聞こえないくらいの小声で囁いた。

「……逃げ足が速くなったな、彩香。
マックで震えてた顔、まだ覚えてるぞ。
汗かいて、太ももぎゅっと閉じて……可愛かった」

彩香の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
健治さんは真面目な表情を崩さず、資料をめくりながらさらに小声で続ける。

「意地悪したくて仕方ないが……今は我慢してる。
お前が俺のものだってことを、ちゃんとわかってるからな。
……逃げても、全部俺が受け止めてやる」

包容力たっぷりの低い声に、意地悪さと熱い独占欲が混ざっていた。

彩香は耳まで真っ赤になり、膝の上で指をぎゅっと握りしめた。

汗が再び額に浮かび、声も出せずに小さく縮こまる。

健治さんは満足げに軽く頷き、普通の課長の声に戻った。

「では、この部分の数値だけ確認してくれ。後でメールするから」

そう言って、悠然と自分のデスクへ戻っていった。

彩香はデスクに突っ伏しそうになりながら、
胸の奥で激しく波打つ感情を抑えきれずにいた。

(……もう……本当に意地悪……でも、安心する……大好き……)
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