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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第44章 逃げ切れない平日の甘い攻防~水曜~昼編
<彩香SIDE>

同日 13時58分 神奈川支店 13階 企画部フロア

彩香がまだ動悸を抑えきれずにPCに向かっていると、
画面右下に新着メールの通知が表示された。



送信者:大内 健治
件名:【既存顧客向けDXツール簡易版】 午後作業について
中山
先ほどの確認ありがとう。
資料の修正は概ね問題ないが、
発表会資料の最終調整と、セキュリティ強化部分の追加提案が必要だ。
本日の定時後、18:00から面談室で2人だけで進めたい。
スケジュールに入れておいたので、残業対応をお願いする。
大内



彩香はメールを読み終えた瞬間、顔から血の気が引いた。

「……え……」

指が震え、画面をスクロールする手が止まる。

「2人だけで」「残業」「面談室」という文字が、頭の中で大きく点滅した。

(……残業……確定……しかも面談室で2人きり……今日一日ずっと逃げ回ってるのに……
もう、逃げられない……)

彩香の瞳が虚ろになり、肩ががっくりと落ちた。
午前中から続いた好き避けの緊張と、昨日の面談室での甘やかしの記憶、
そして今までの激しい夜の余韻が一気に蘇り、頭がくらくらする。

(もう……限界……これ以上健治さんに意地悪されたら、私、本当に壊れちゃう……
顔見るだけで熱くなって、声聞くだけで足が震えて……
どうしよう……どうやって逃げよう……)

彩香は必死に頭の中で逃げ道を考える。


体調不良を申し出る?(でも昨日まで普通だったし、怪しまれる……)
森川さんに手伝いを押し付ける?(でも健治さんが直接指定してきたら無理……)
急用を作って早めに帰る?(でも課長命令の残業を断れるわけがない……)


どれも上手くいく気がせず、彩香は机に額をくっつけるようにして小さく丸くなった。

(……健治さん、絶対意地悪する気満々だ……「逃げ足が速くなったな」って囁きながら、
また太もも触ってきたり、耳元で甘く意地悪言ってきたり……もう、耐えられない……
好きすぎて、怖すぎて……どうしたらいいの……)

額からじんわりと汗が浮かび、彩香は両手で顔を覆った。
周囲に聞こえないように、小さく小さく呟く。

「……もう、限界です……健治さん……」
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