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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第47章 逃げ切れない平日の甘い攻防~金曜~
同日 15時過ぎ 15階 企画部・営業部共用の大会議室

窓の外には、初夏の陽光が横浜の街並みを照らしていた。
空調の効いた室内に、両部署の社員がざわめきながら席に着く。

長机がコの字に並び、正面のスクリーンには
「2024年度上半期 新規建設DX案件進捗報告」のタイトルが投影されていた。

大内健治は、企画部の席の端に座り、腕を組んで静かに前方を見ていた。
口ひげの下の唇は、いつものようにわずかに引き結ばれている。
隣には営業部の矢賀部課長が肘をついて、軽く欠伸を噛み殺していた。

発表は営業部から始まり、続いて企画部の各担当が順に立った。
中山彩香の番が近づくにつれ、健治の視線が、彼女の座る方向へわずかに、しかし確実に傾いていく。

「……次、企画部・中山です」

彩香が立ち上がった。黒い細枠のメガネの奥で、大きな瞳が少し揺れている。
いつもの地味で控えめな装いだ。
手元の資料を握る指が、わずかに白くなっている。

彼女は教壇に立ち、深呼吸をしてから口を開いた。

「は、はい……それでは、既存顧客向けのDX推進プランについて、ご報告いたします」

最初の数秒、声がわずかに震えた。喉が渇いているのが自分でもわかる。
資料をめくる手が、小さく震えている。それでも、彼女は一度も視線を落とさなかった。
スクリーンに映るグラフを指し示しながら、丁寧に、しかしはっきりとした口調で説明を続けていく。

「……この数値から見ますと、導入後三ヶ月で現場作業時間が平均18%短縮されており、
特に中規模案件での効果が顕著です。来期に向けては……」

時折、言葉の切れ目で息が詰まる。声が細くなる瞬間がある。
それでも、彼女は決して立ち止まらなかった。

準備してきた資料を一枚一枚めくり、数字の根拠を正確に述べ、
営業部からの質問にも真摯に答えていく。
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