この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
お題小説第8弾『心の暴走』
第1章 片思い…
梅雨の雨は嫌いだった――
空は重く、景色は滲み、蒸し暑く、心まで湿っぽくなる…
それなのに今日は、雨のせいだけではなかった。
「……なんで」
わたしはスマホを見つめる。
昼休みに見かけた光景が、頭から離れない…
好きな男……彼が、クラスの女子と楽しそうに笑っていた。
ただ、それだけ…
本当に、それだけだった。
なのに心は勝手に、心が騒ぎ始める。
仲がいいのかな?
付き合っているのかな?
あんな笑顔、私には見せたことあったっけ?
考えなくていいことばかりが浮かんでくる。
「重症だな……」
自分で呟いて、思わず苦笑してしまう。
片思いは、ときどき暴走する――
相手は何もしていないのに…
何も知らないのに。
勝手に期待して…
勝手に不安になって…
勝手に傷つく。
窓の外では、雨粒が絶え間なく流れている。
その雨が、まるで思考まで流してくれそうなのに…
肝心なことは、消えてくれない。
その時、スマホが震えた――
LINEの通知。
ディスプレイの名前を見て、わたしは目を見開く。
彼からだ――
『なんか今日、元気なかったけど大丈夫?』
たった一文…
それだけで胸が跳ねる。
「ずるい……」
思わず笑ってしまう。
さっきまで勝手に落ち込んでいたのに…
勝手に嫉妬して…
勝手に、この梅雨空みたいなジメっと暗い顔をしていたのに…
彼は、そんなことを何も知らない、知らないまま、こうして心配してくれる――
わたしはしばらく画面を見つめ、それからゆっくり返信を打つ…
『大丈夫、ちょっと考え事してただけ』
本当は違う…
考え事の原因は、あなたなんだけど――
そんな言葉は送れない。
送った瞬間、この穏やかな関係が変わってしまいそうだから――
雨はまだ降り続いている。
ホームを濡らし、傘を叩き、街を霞ませる、梅雨の暗い雨。
わたしはスマホを胸に抱え、小さく息を吐いた――
片思いとは不思議なものだ…
不安と、自分勝手な嫉妬心に暴走していた心を止められるのも…
また、その相手自身なのだから――

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


