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お題小説第8弾『心の暴走』
第2章 梅雨…
雨だった――
朝から降り続く梅雨の雨が、街を灰色に染めている…
わたしはスマホを握りしめたまま、駅のホームに立っていた。
画面には、昨夜送ったメッセージ…
『おやすみ』
たった四文字。
そして、その下には返信がない――
「…はぁ」
分かってはいる。
忙しいだけかもしれない…
寝落ちしただけかもしれない…
そんなことくらい頭では分かっている。
それなのに…
好きになると、心は簡単に暴走する――
返信がない理由をぐちゃぐちゃと何十通りも考え…
嫌われたのかもしれない…
迷惑だったのかもしれない…
他に好きな人がいるのかもしれない…
そんな想像ばかりが膨らんでいく。
電車の窓を打つ雨粒を見つめながら、わたしは自嘲気味に笑う…
「あぁ重いなぁ、わたし…」
そもそも、今までの人生、青春時代に、片思いなんてしたことがない…
いつも皆から麗され、求められ、チヤホヤとされていた…
そう、自分から男を好きになった事がなかった。
だから、この片思いっていう自分の一方的な、恋心の騒めきが分からないし、理解できないでいた――
正直なところ、本やアニメやドラマなんかからの知識としての片思いは、もっと綺麗なものだと思っていた…
遠くから見つめているだけで幸せで…
相手の笑顔だけで満たされるもの…だと。
だけど、実際は違った――
会いたい…
話したい…
もっと自分を見てほしい…
そんな欲張りな感情ばかり増えていく。
ブ、ブ、ブ…
その時、スマホが震えた。
心臓が跳ねる――
慌てて画面を見る…
彼からだった。
『ごめん、 昨日そのまま寝てた』
たったそれだけ…
それだけなのに…
胸を締め付けていた不安が、一瞬でほどけていく。
「……ばかみたい」
わたしは、小さく笑った。
さっきまでの憂鬱も…
勝手な想像も…
全部、この雨に流されてしまいそうだった。
駅のホームに、吹き込む風…
湿った梅雨の空気…
灰色の空…
そして、少しだけ明るくなった心。
片思いは厄介だ…
たった一つのLINEで、簡単に天国にも地獄にも行ける。
だから今日もまた…
暴走しそうになる心を抱えながら、わたしは電車へ乗り込んだ。
あぁ、早く会いたい…
顔が、見たい―――

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