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ウイングの徒然草
第1章 やっと書いたんです……
やっと書いたんです。
そう言える作品が、ひとつできました。
今日は、もう少し昔の話をしようと思います。

まだ私が『特別捜査官・優子』を公開していた頃のことです。
もう十年以上前になるでしょうか。

ある女性読者の方から、電話越しにとても印象に残る言葉をいただいたことがあります。

その方のご主人は、ゴーストライターをされている方でした。文章の世界を、少し近い場所で見ている方だったのだと思います。

その女性が、私の作品を読んで、こう言いました。

「ご自分の文章がどれだけ人を惹きつけているか、分かっていないでしょう……」

正直に言えば、そのときの私は、その言葉をうまく受け止められませんでした。

もちろん、嬉しくなかったわけではありません。
むしろ、とても嬉しかったです。

ですが、自分ではただ好きなものを書いているだけでした。官能小説を書き、女性が追い詰められていく心理を書き、言葉ではなく空気で支配されていく場面を書いていた。

それが人を惹きつけるものなのかどうかなど、自分では分かりませんでした。

その方は、私にこうも言いました。
「官能だけではなく、ほかのものも書いた方がいい」

その言葉も、ずっと心のどこかに残っていました。

当時の私は、たぶんその意味を分かっていなかったのだと思います。官能を書くことが好きでしたし、読者もそこを求めてくれていました。だから、あえて別のものを書く必要があるのか、自分でもよく分かっていませんでした。

けれど、今になって思います。あの人は、私の文章のどこかに、官能以外にも通じるものを見てくれていたのかもしれません。

人物の心理。
沈黙の間。
追い詰められていく空気。
一度踏み込んだら戻れない場面。
そして、読者に先を読ませる引き。

それらは、官能だけのものではありませんでした。
今回、まったく別のジャンルを書いていて、何度もそのことを感じました。
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