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お題小説第8弾「暴走彼氏」
第1章 暴走彼氏
「くそっ!」
両手で顔を覆う。

「クソっ!クソっ!」
胸が痛い。
目頭が熱くなる。

目の前にいるのに、永遠に届かない。
抱きしめたいほど好きなのに、どうしようもない壁がある…。

「翔ちゃーん!ごめん、メガネ取ってー!
 ちょっとシャンプーとか見えないんだけど!」

その声にハッとした。
メガネは目の前のテーブルの上にあった。

それを持って、風呂場の前に行く。

「和也…」
声を掛けると、ガラスの折れ戸が内側から押された。
そこに、シャワーを浴びている和也が立っていた。

「あ、翔ちゃん
 メガネ、そこ置いといて」

シャワーのしぶきがかかるみずみずしい身体。
全裸の、何も身に着けていない、好きな人の姿があった。

意外と筋肉質な胸。
細すぎもせず、もちろん太りすぎてもいない腹。
尻の肉もキュッと締まっている。

その姿を見た時、ぶわっと、翔の頭が沸騰した。
胸の奥から、湧き上がった衝動を抑えきれなかった。

ぐいとそのまま和也の身体を風呂場に押し入れるようにする。

「えっ!…しょ、翔ちゃん!?」

そのままシャワーのしぶきの中、本能のまま、翔は和也をきつく、きつく抱きしめる。

そして、そのまま…翔は和也にキスをした。

「和!」

柔らかい唇の感触。
肌と肌が触れ合い、和也の心臓の鼓動がダイレクトに伝わってくるみたいだった。

湯の矢が二人の体を濡らし、唇から漏れる吐息は、何よりも熱かった。

和也は、目を見開いていた。
あまりにも突然のことに、混乱をしていた。

そして、数秒後、唇が離れる。
和也を見つめる翔の瞳が、揺れていた。

そして、そのゆらぎは、すぐに恐れの色彩を帯びる。

「あ…いや…お、俺…」

まるで土砂降りの中で見つめ合っているようだった。
己の劣情を恥じて、翔が和也から目をそらす。

ぎゅうっと心臓が痛んだ。

「翔…ちゃん…」

目を見開く和也を前に、翔はとうとう覚悟を決めた。
どうせ、討ち死にするなら…
せめて、最後に、気持ちを伝えよう。
これが単なる気の迷いじゃないということを、
せめて、伝えよう。

「好き、なんだ、和…どうしようもなく
 どうしようもなく、
 ずっと、ずっと、ずっと、好きだったんだ…」

「しょ…うちゃん…」
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