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美香 〜遠い専務と私の二年間〜
第1章 美香 〜専務と私の二年間〜
この話は今の夫と結ばれるまでの、甘く、そして深い熱に浮かされた二年間の記憶です。

私の名前は美香。M女子大の四回生で国家試験を見事一発でくぐり抜け、希望に胸を膨らませて入社した企業で、私は運命のように一人の男性と出会い、どうしようもなく惹かれていった。

彼の名前は圭佑。社長の令息であり、若くして専務の座にある人だった。新人歓迎会の喧騒の中、彼を見た瞬間、時が止まったかのように感じた。すっきりと通った鼻筋に、仕立ての良いスーツが似合う長身。周囲を和ませる紳士的で余裕に満ちた振る舞いと、耳の奥を心地よくくすぐる低く穏やかな声。彼が通り過ぎるたび、微かに漂う洗練された香りが、私の胸の奥を静かに波立たせた。

けれど、彼は私にとってあまりにも手の届かない、遠い存在だった。

「このまま、片思いでいよう。そうすれば彼は私の心の中で素敵なままで居続けられる」
心の中でそう鍵をかけた。

廊下ですれ違うとき、エレベーターの密室で偶然居合わせたとき、交わすのは味気ない儀礼的な挨拶だけ。もし言葉を交わし、彼という現実を知ってしまえば、私の中で大切に育てた完璧な理想像が音を立てて崩れてしまう気がした。触れられない距離を保つことこそが、この恋を守る一番の方法だと信じていた。

変化が訪れたのは、唐突だった。

ある日、課長と共に専務室に呼ばれた。重厚な扉の奥、磨き上げられた革のソファの匂いが漂う静寂の空間。用件が終わり、退出を促されるかと思いきや、私だけがその場に引き留められた。

「〇〇くん、仕事とは関係ないんだけど……ゴルフに興味ある?」

私と彼、二人きりの密室。彼の真っ直ぐな視線が、私を射抜いている。 社内のゴルフ愛好会に女性が少ないから、というのが彼が私を誘った理由だった。運動の経験すらない私がためらっていると、彼は柔らかく微笑み、女性用のクラブセットを貸してくれると提案した。

その日を境に、私の生活は一変した。
「とにかく時間があれば練習しなさい」という彼の言葉に従い、仕事終わりや休日に打ちっぱなしの練習場に通い詰める日々。多いときは週に三日も通い、グリップを握る手に豆ができ、少しずつ手のひらが固くなっていく感触すらも愛おしかった。彼の手配してくれたコーチの熱心な指導のもと、ボールを芯で捉えたときの甲高い打球音が、夜の冷たい空気に響き渡った。
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