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美香 〜遠い専務と私の二年間〜
第1章 美香 〜専務と私の二年間〜
廊下ですれ違うたびに、「いつかは一緒にラウンドしようね」「もうそろそろデビューできそう?」と声をかけられるようになり、彼との距離が少しずつ縮まっていくのを感じていた。
そして三ヶ月後、念願のコースデビューの日。視界いっぱいに広がる、抜けるような青空。足元には緑の芝生が太陽の光を反射してきらきらと輝き、深く息を吸い込むと、若草の青々とした匂いが胸いっぱいに広がった。自然の息吹を肌で感じる歓び。コースを移動するカートの中、彼と肩が触れ合いそうな距離で並んで座る。エンジンの微かな振動と、隣から伝わってくる彼の体温。けれど彼の口からこぼれるのは、ゴルフの話ばかりだった。
(私自身には、興味がないのかしら……)
少しの寂しさを覚えながらも、こんなにも美しい世界を教えてくれた彼に、深い感謝を抱かずにはいられなかった。
西の空が茜色に染まり始めた帰り道。彼の運転する黒いセダンの助手席で、私は心地よい疲労感に包まれていた。滑らかなシートの感触と、車内を満たす静かな空気。 駅に到着し、車がゆっくりと停まる。
「それでは、また……」と別れの言葉を紡ぎかけた私の唇は、次の瞬間、予期せぬものによって塞がれていた。
「えっ、どうして?」
驚きに目を見開く。至近距離にある彼の端正な顔。胸の奥で、心臓が早鐘を打つように激しく高鳴る
。
「気づいてたんだ。君の僕への気持ち」
彼が低く甘い声でそう囁くと、大きな手が私の肩を抱き寄せた。再び重なる唇。今度はさっきよりも少し強く、確かめるような口づけ。抗うことのできない熱が全身を駆け巡り、指先から力が抜け落ちていく
ああ、だめだ。私はこの底知れぬ甘い深淵へと、はまり込んでいく――
「ありがとうございました」
震える声でそう告げ、お辞儀をしながら逃げるように助手席のドアを閉める。
走り去る黒いセダンの後ろ姿が、夜の闇に溶けていくのを呆然と見送った。 ひんやりとした夜風に吹かれながら、そっと自分の唇に手を当てる。そこにはまだ、火傷しそうなほどの彼の痕跡と、柔らかな温もりが確かに残っている気がした。
『今度、自宅に遊びにおいで』
車を降りる直前、彼からかけられた言葉が、甘い余韻となって私の頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
そして三ヶ月後、念願のコースデビューの日。視界いっぱいに広がる、抜けるような青空。足元には緑の芝生が太陽の光を反射してきらきらと輝き、深く息を吸い込むと、若草の青々とした匂いが胸いっぱいに広がった。自然の息吹を肌で感じる歓び。コースを移動するカートの中、彼と肩が触れ合いそうな距離で並んで座る。エンジンの微かな振動と、隣から伝わってくる彼の体温。けれど彼の口からこぼれるのは、ゴルフの話ばかりだった。
(私自身には、興味がないのかしら……)
少しの寂しさを覚えながらも、こんなにも美しい世界を教えてくれた彼に、深い感謝を抱かずにはいられなかった。
西の空が茜色に染まり始めた帰り道。彼の運転する黒いセダンの助手席で、私は心地よい疲労感に包まれていた。滑らかなシートの感触と、車内を満たす静かな空気。 駅に到着し、車がゆっくりと停まる。
「それでは、また……」と別れの言葉を紡ぎかけた私の唇は、次の瞬間、予期せぬものによって塞がれていた。
「えっ、どうして?」
驚きに目を見開く。至近距離にある彼の端正な顔。胸の奥で、心臓が早鐘を打つように激しく高鳴る
。
「気づいてたんだ。君の僕への気持ち」
彼が低く甘い声でそう囁くと、大きな手が私の肩を抱き寄せた。再び重なる唇。今度はさっきよりも少し強く、確かめるような口づけ。抗うことのできない熱が全身を駆け巡り、指先から力が抜け落ちていく
ああ、だめだ。私はこの底知れぬ甘い深淵へと、はまり込んでいく――
「ありがとうございました」
震える声でそう告げ、お辞儀をしながら逃げるように助手席のドアを閉める。
走り去る黒いセダンの後ろ姿が、夜の闇に溶けていくのを呆然と見送った。 ひんやりとした夜風に吹かれながら、そっと自分の唇に手を当てる。そこにはまだ、火傷しそうなほどの彼の痕跡と、柔らかな温もりが確かに残っている気がした。
『今度、自宅に遊びにおいで』
車を降りる直前、彼からかけられた言葉が、甘い余韻となって私の頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。

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