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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第1章 プロローグ
私の自宅は生駒山地の西麓にひっそりと広がる閑静な住宅街にある。
大阪の喧騒からわずか十数キロしか離れていないのに、ここだけは時間がゆるやかに流れている。自宅の目の前を、清滝川という小さな川が静かに流れている。
山あいの源から西へ向かってゆるやかに下り、やがて寝屋川へと注ぐこの小川は、決して雄大ではない。それでも、四季折々に表情を変え、住む者の心に深く染み込んでくる。
春は、川岸の桜や山桜が淡いピンクに染まり、水面に花びらが散る。
夏は、木々の緑が濃くなり、川面に木漏れ日が揺れる。蝉の声と水音が重なり、午後の光がまぶしい。
秋になれば、楓やナラの葉が赤や黄金に変わり、川面に落ちてゆっくりと流れていく。
冬の清滝は、静けさそのものが風景になる。
底冷えの朝、清滝川の水面は薄氷のように澄み渡り、朝日を受けて銀の鱗を散りばめたようにきらめく。吐く息は白い煙となって空中に舞い、すぐに消えてゆく。道行く人の影すら映さないアスファルトの上を、柔らかな冬の光がただひたすらに照らしている。
川岸の草は枯れ、木々は葉を落として骨のような枝を空に伸ばす。その静けさの中で、電柱の根元にぽつりと咲く小さな花がある。帰り花――季節を忘れたように、あるいは忘れられたように、ひっそりと色を灯す。風に揺れるその花びらは、まるで誰かの吐息のように儚い。
山裾から吹き下ろす空気は鋭く、窓を叩く音はピシリ、ピシリと乾いた響きを立てる。川の流れだけが、凍てついた世界にわずかな生命の脈を伝え続けている。
この冬の清滝は、美しくて、どこか孤独だ。
周囲は低い山並みに抱かれ、道行く人も少ない。アスファルトの道路に人影が映ることもまれで、ただ柔らかな日差しが燦々と降り注ぐだけである。
遠くに生駒の稜線が淡く浮かび、夜になれば大阪方面の灯りがわずかに霞んで見えることもある。古い清滝街道の面影が残るこの土地は、どこか懐かしく、どこか孤高だ。
家族の笑い声が響く広い家の窓から、いつでもこの川と山が見える。
季節は巡るが、川だけは変わらず、静かに流れ続けている。
大阪の喧騒からわずか十数キロしか離れていないのに、ここだけは時間がゆるやかに流れている。自宅の目の前を、清滝川という小さな川が静かに流れている。
山あいの源から西へ向かってゆるやかに下り、やがて寝屋川へと注ぐこの小川は、決して雄大ではない。それでも、四季折々に表情を変え、住む者の心に深く染み込んでくる。
春は、川岸の桜や山桜が淡いピンクに染まり、水面に花びらが散る。
夏は、木々の緑が濃くなり、川面に木漏れ日が揺れる。蝉の声と水音が重なり、午後の光がまぶしい。
秋になれば、楓やナラの葉が赤や黄金に変わり、川面に落ちてゆっくりと流れていく。
冬の清滝は、静けさそのものが風景になる。
底冷えの朝、清滝川の水面は薄氷のように澄み渡り、朝日を受けて銀の鱗を散りばめたようにきらめく。吐く息は白い煙となって空中に舞い、すぐに消えてゆく。道行く人の影すら映さないアスファルトの上を、柔らかな冬の光がただひたすらに照らしている。
川岸の草は枯れ、木々は葉を落として骨のような枝を空に伸ばす。その静けさの中で、電柱の根元にぽつりと咲く小さな花がある。帰り花――季節を忘れたように、あるいは忘れられたように、ひっそりと色を灯す。風に揺れるその花びらは、まるで誰かの吐息のように儚い。
山裾から吹き下ろす空気は鋭く、窓を叩く音はピシリ、ピシリと乾いた響きを立てる。川の流れだけが、凍てついた世界にわずかな生命の脈を伝え続けている。
この冬の清滝は、美しくて、どこか孤独だ。
周囲は低い山並みに抱かれ、道行く人も少ない。アスファルトの道路に人影が映ることもまれで、ただ柔らかな日差しが燦々と降り注ぐだけである。
遠くに生駒の稜線が淡く浮かび、夜になれば大阪方面の灯りがわずかに霞んで見えることもある。古い清滝街道の面影が残るこの土地は、どこか懐かしく、どこか孤高だ。
家族の笑い声が響く広い家の窓から、いつでもこの川と山が見える。
季節は巡るが、川だけは変わらず、静かに流れ続けている。

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