この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
スイカ割りを、もう一度
第1章 スイカ割りを、もう一度
気がつくと、真っ白い天井と同じく真っ白いカーテンが見えた。
ここがどこなのかわからず、あたしは何度かまばたきをして、横を向いた。
その瞬間、頭の後ろがわに激痛が走る。
「痛……」
そう呟いた時だった。
「リカちゃん……っ」
女性の声がして、カーテンが勢いよく開いた。黒い長髪の人。目が合う。
その女性は手からペットボトルらしきものを落とした。
「良かった、目覚めたのね、リカちゃん……。先生、先生呼んでくるからね!」
大粒の涙。落ちたペットボトルを拾うこともせずに、女性はまたカーテンの向こう側に消えた。
「ーーようやく意識が戻ったんですね。丸二日眠っていたんですよ? 痛みはありますか?」
「……はい。頭が……痛いです」
「リカ……リカ……良かった」
唐突に、黒髪の女性が屈んであたしを抱きしめる。あたしは戸惑った。
「リカ……」
さっきから何度も呼ばれるその名前。それはあたしの名前なんだろうか。
ーーそもそもこの女性は、誰だろう?
思い出せない。
困惑するあたしの気持ちがわかったのか、女性があたしの体から離れたあと、医師が言った。
「自分の名前を思い出せますか?」
「…………」
あたしは答えられなかった。医師と黒髪の女性を交互に見る。
自分の名前がわからない。リカ、と呼ばれていたけれど、それもどこか他人の名を聞くときのように実感が持てなかった。
「あなたは、もしかしたら記憶喪失かもしれませんね。脳波の検査をしてみましょう」
「そんな……」
黒髪の女性は両手で顔を覆い、泣き崩れた。
しゃがんだ彼女の横には、さっき落としたペットボトルが無造作に転がったままだった。
あたしは二日前、友達とスイカ割りをしている最中に転んで頭を打ち、意識を失ってしまったらしい。
そしてそれが原因で記憶喪失になってしまったと病院の先生は言った。
突然のことで信じられなかった。
隣にいた女性はあたしの母親らしく、あたしの名前は『木ノ内梨華(きのうちりか)』というらしい。
先生に説明されてもよくわからなかった。
「大丈夫よ。すぐに思い出せるからね」
黒い髪の女性はあたしを抱きしめた。
「……うん」
あたしは笑顔で頷いてみせたけど、本当は何もかもに実感が持てなくて、不安な気持ちばかりが膨らんでいった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


