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悪癖とトラウマ
第8章 一難去ってまた一難
土曜日。
今日は、出掛ける。


誰かと一緒に?

否、一人で出掛けるのだ。



「行ってきまーす」

誰かが返事を返してくれるわけでもないのだが、何と無く、出掛ける前のおまじないのような意味で口にする。



「痛…」

快晴の空が目に痛くて、目を細める。



今日買いに行くものは服だ。
服を買いに行くなんていつぶりだろうか。

普段あまり服装を気にして無い所為か、ラフな格好が多くなる。
他人と出掛ける事なんてそうそう無かった。
閒部と遊ぶ時もあるが、二人共引きこもりがちで人混みがダメなせいでどうしても家の中で遊ぶことになってしまう。

ああ、慣れない。

誰かのために準備をするのは。

柄じゃないだなんて自分でも自覚しているが、止むを得ない。

断れなかった。

『デートしよう』
だなんて。

聞き慣れない単語を並べられて。

少し照れくさそうにしながら。

誘われた。

誘いに乗った。


だって仕方がないだろう?

初めてのことなんだから。


「どんなのがいいのか……あ…」

思わず笑みがこぼれる。

「ははっ」

滑稽だ。
これからのことに浮き足立つ自分が。

けれど

楽しみになってしまっているから。

初めてのことに浮き足立つことくらい、許してください。
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