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悪癖とトラウマ
第8章 一難去ってまた一難
あれ、
何だろう。

こうゆうのって
むずかゆい。

「…りがと」
「んっ!じゃあー…あっちのデパートに行かない?俺が買いたいものもあるんだ。」
「あー、わかった。行こうか。」

よくこんな人混みの中でも元気だな。
僕なんてもう酔いそうなのに。

「どんなのにしようかー…長ズボンハーフパンツ七分袖スカート…」
「は?」

雛拓のセリフの最後がちょっとおかしかった気がして反射的に聞き返す。

「あっ…いやー…何でもない…うん…」

雛拓は僕から目を逸らした。

まあそこまで気にする事でもないか。

「ふーん…」

視線を雛拓から前の方へと移す。

「あ、そういえばさー…楽器って好き?」
「へ?」

雛拓が突然尋ねてきた。

「楽器、好き?」
「何が?」
「あー…ごめん。好きな楽器ってある?」
「楽器?」
「そう、楽器」

好きな楽器。
そんなもの考えたことも無かった。

「好きな楽器…かぁ…」

思い当たる物がなかなか見つからない。

「…無いかな」

考えた結果がこれだ。

ごめんね?
楽しいトークを提供できるほどの能力は無いんだ。

「そっかー」

雛拓は笑った。
僕は面白い返答をできなかったのに

屈託の無い笑顔。
眩しいな。

「いやぁ…俺、さ」

ゆっくりと雛拓は口を開いた

「今まで歌しか持ってなかったし、バンドの曲とかみることしか出来なかった。」

けどさ、と雛拓は続けた。

「実際にそのやる立場になってからじゃないと見えない景色ってあるもんだよね」

いつもの屈託の無い笑顔でそう呟いた。
はっきりとよく通る声で。
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