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クラゲ色の夏
第1章 クラゲ色の夏
「ことみちゃんはのんびり屋さんだね。ヒトじゃなくて、クラゲさんに生まれてたら良かったね」
昔、ママが言った。そこにきっと悪意はなくて、その少し前に水族館で見たクラゲの絵をよくわたしが描いていたから出てきた生き物だと思う。
でもその言葉はいつもわたしの中で、まるでメリーゴーランドのように、ぐるぐるぐるぐるまわっていた。
高校二年生の、夏休み前。
浜名(はまな)先生が、わたしの席へとやってきた。五十代半ばの男の先生だ。
「返されたテスト、見たか?」
「うーん、まだ。これから見る」
「敬語」
「……はい」
「赤だぞ」
「……はい」
返却されたテストを見る。オール赤だった。
「あ……」
「夏休みに補講と追試があるから、出ろよ」
「はーい」
先生はそれだけ言って席を離れようとする。
「あの……」
わたしはその後ろ姿に声をかけた。
「わたし卒業できるかな」
「どうだろな。まだ挽回できるよ、頑張ろう」
背中越し、ガッツポーズをした。わたしはその姿と返却された答案用紙を交互に見やる。丸が少ない以前に、最後まで解けきれていない空白が目立った。
「ことみちゃん、どうだった?」
「んー……」
親友の由美(ゆみ)に答案用紙を渡す。
「また赤か……まあ大丈夫、きっとどうにかなる。それより聞いた? 海、今年は七月二十六日の日曜日にするって。行くでしょ?」
「うん」
「今年は何人集まるかなあ」
由美は楽しそうに笑った。
夏休みに、クラスのみんなで海に行くのは、この学校の恒例行事らしい。引率は浜名先生。家が海沿いで、三十秒歩けば海らしい。だから始まった企画なんだって。
わたしは高校一年の夏休み前にこの学校に転校してきた。ママが、探してくれた場所だ。

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