
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラゲ色の夏
第1章 クラゲ色の夏
「た、大変! ことみさんが溺れて……」
「溺れて……ないよ?」
「え」
浜にいた先生に伝えようとしてくれたけど、そんなことはなかったから、わたしは否定した。
集まってきた生徒たちの中にいた由美も、わたしと遠藤くんを交互に見て言った。
「ことみちゃん泳ぐの、てか浮くの得意だもんね」
「うん……」
一応泳げもする。犬かきと、なぜか背泳ぎだけ。
「ご、ごめん! 浮き輪から落ちるの見えたから、てっきり溺れてるのかと」
と遠藤くん。
「そんなこと言って、本当は女子の体触りたかっただけじゃないよな?」
と男子。
「あはは、やだー、遠藤くん怖い」
続いて女子も。
「ち、違うって! 俺、なんもしてないよ、ね?」
「……」
されてない。それを伝えようとして、なんて言葉にしようかちょっと考えてしまった。すぐに言葉にできなかったら。
「あの、本当に違うから! その、ごめんことみさん……! 腕とか触っちゃって」
「あの……」
走っていってしまった。遠藤くん、初めて挨拶以外で喋ったかもしれない。
「どした?」
先生の間延びした声に、生徒たちは振り返る。
「溺れてなかったけど、えっと、溺れてるって思ったらしい遠藤くんに、助けてもらいました。変なことは、されていません」
「…………そうか」
周りから、笑いが起こる。
「遠藤そういうやつじゃないから。セッカチだけど、いいやつ」
遠藤くんと仲のいい、隣のクラスの男子生徒が言った。名前は、なんだっけ。思い出せなかった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


