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その足に頬を寄せたい
第1章 その足に頬を寄せたい
「あ、須賀(すが)くん、神崎(かんざき)くん! 久しぶり!」
僕たちが馴染みの居酒屋で飲み始めて三十分ほど経った頃だった。ドアベルの音に顔をあげると、黒髪でボブヘアの女性が目の前にいた。
かつかつと響くヒールの音にびくりとし、思わず女性の足元を見ると、黒いレザー素材のブーツを履いていた。青いワンピースを着ていて、ちょうど太ももが見える。そのセクシーさについ目線がいってしまう。
「ごめんね遅くなって」、と顔の前で両手を合わせる女性に、僕たちは首を振った。
「大丈夫大丈夫、俺たちもさっき来たとこ! 仕事お疲れ様」
そう言って、隣に座る神崎達紀(たつのり)は笑った。
僕、須賀智(さとし)と隣に座る神崎達紀、そして目の前の女性、柊木朋子(ひいらぎともこ)は高校の同級生だった。
一週間ほど前、たまたま達紀が柊木さんを見かけたらしく、今度飲まないかと誘ったらしい。
僕たちは今年二十七歳になる。僕と達紀は九月現在すでに二十七歳になっていたが、柊木さんの誕生日は知らなかった。
達紀とは同じ会社に勤めている。地元の小さな不動産屋だ。だからよく一緒にご飯や飲みに行くが、高校を卒業して、柊木さんを見かけたことは一度もなかった。まさか近くに住んでいたとは。
「まあ、座って。お酒、何にする? あ、俺ら先にビール一杯いただいちゃってるけど」
達紀がメニューを差し出しながら声をかけた。
「あたしもとりあえずビールで」
それを受け取り、開く前に一言。
達紀は注文用のiPadでビールを注文した。
「そういえば、高校の時なんて呼んでたっけ?」
ふいに達紀が言う。
「うーん、『姫』……とか?」
「呼ぶか、アホ」

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