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キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏
第1章 こんにゃくと、レジのお姉さん
 自分の行動はやっぱりおかしい気がしてきた。わざわざスーパーまでやってきて、こんにゃくを一個だけ買う客なんているのだろうか。
 あのやり方は雑誌にも書いてあったぐらい有名なのだから、男子がこんにゃくを何に使うのか、あそこのレジにいるお姉さんだって知っているかもしれない。
 農協のスーパーには尾崎豊の「卒業」が流れていた。
 昭和六十年のことである。
 七月の昼下がり、客もまばらな店内で、十六歳になったばかりの渋谷祐介(しぶたに・ゆうすけ)は、糸こんにゃくや玉こんにゃく、板こんにゃくなどが並ぶ陳列棚の前を行ったり来たりしていた。
 好きな女の子をちらちらと見てしまうように、先ほどから祐介がいやらしい視線を送っているのは、こんにゃくのなかでも一番大きくてぶあつい「板こんにゃく」である。
 雑誌(拾ったエロ本なのだが)によると、板こんにゃくの側面に切り込みを入れて、そこにおちんちんを突っ込むと、あたかも女性器に挿入している感覚が味わえるらしい。
 この情報は昨晩仕入れたばかりで、いてもたってもいられず、さっそく今日買いに来たのだ。
 だが、物事はそう簡単にうまくいかないものだ。
 つい先日も同じようなことがあった。
 祐介が住む村は巨大なダム湖ぐらいしか特徴のない山間の田舎で、本屋もなかった。本屋がある町までは、ひと峠を超えねばならず、バスなら約四十分、自転車なら一時間はかかる。それでもエッチな漫画が欲しくて、バスに揺られて、町の本屋まで出かけたのだが、運の悪いことに、レジにいたのが大学生ぐらいの可愛いお姉さんだった。
 この苦しみは男子にしか分からないだろう。おちんちんは痛いほど勃起しているというのに、プライドが邪魔して、レジという最後の砦を突破できないジレンマ。
「恥ずかしいのは一瞬だけだ!」と励ます自分と「あのお姉さんにエロガキだと思われちゃう……」という自意識過剰が激しく葛藤して、一向に決着がつかない。
 無駄に時間だけが過ぎ、ついにはレジのお姉さんから「何かお探しですか?」と不審な目でたずねられて、「あ、いや、その……」。女の人と会話すること自体、めったにない祐介は、しどろもどろになって、ダッシュで逃げだしたのだ。
 あのときの情けなさといったら、ありゃしなかった。
 いったい、なんのためにバスを使って、町まで出かけたのやら。
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