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如月茜(きさらぎ あかね)
第4章 第2話 新しい日常と穏やかな温もり
(もしかしたら、間違っているのは私たちの方なんじゃない……? )
(茜さんの言っていることこそが真実で、私たちのほうが世の中の仕組みを何も分かっていない世間知らずなんじゃ……)
隣に立つ娘美咲もまた、蒼ざめた顔で自分の唇を噛みしめ、全身を小刻みに震わせていた。
(……もし、本当にそうなら……)

(むしろ、無条件に茜さんの命令に従い、自分のすべてを差し出す女性たちの方こそが……本当に賢くて、世の中の真理をわきまえ、本当の価値を理解している本物の人間なんじゃないんだろうか……?)

自分たちの掲げてきた「尊厳」や「常識」というちっぽけな盾が、あまりにも無力で、滑稽なものに思えてくる。

宗教の説法のような圧倒的な倫理観と尊厳というテーマに完全に押しつぶされ、ついに白旗を上げたのは、母親の恵だった。

彼女は震える息を整えると、観念したような、しかしどこか狂おしい決意を宿した目で茜を見上げる。
「……とはいえ、私たち、茜さんには普段から大変お世話になっていますから……美咲のことは、どうか勘弁してください」

恵は自身の身体を抱きしめるようにしながら、掠れた声で呟いた。
「ただ、私の粗末なものでよければ毎晩お見せしますので……どうか、それでお許しください」

その言葉を聞いた瞬間、隣に立っていた娘のみさきは、信じられないものを見る目で母親の顔を仰いだ。
「ママ……! 何を言ってるの……っ!」

しかし、その恵麻の譲歩に対し、茜はどこか困惑したような、冷ややかな落ち着き払った声で呟く。
「いや……心から見せたいわけじゃないなら意味がないんだよ。」
「恵麻さんが心から見せたいと思っているわけではなく、嫌々なら僕は強要しないよ。そういう意味で言ったんじゃないし……」

その予想外の返しに、話は一向に進まず、問題も一向に解決しない。

「もう……茜さん、せっかく私がここまで勇気を出して言ったのに、そんなふうに困らせないでください……!」
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