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如月茜(きさらぎ あかね)
第10章 見せあいこだけって言ってたじゃん
リビングに差し込む午後の柔らかな光が、コーヒーの香りと共におだやかな時間を演出していた。
最近の母親恵麻は、どこか満たされていた。
恋する茜からもたっぷりと愛情を注がれ、一人娘の美咲も以前よりずっと明るく、イキイキとした表情を見せるようになっていた。
家庭の中は、温かな空気に包まれている。
――だが、ふと脳裏によみがえる言葉があった。
数週間前、茜から言われたのだ。
『美咲ちゃんの態度が明るくていいんだけどさ、ちょっと気になってる部分があるんだよね。僕から指摘してもいいんだけど、まずは母親であるあなたが話してみては?』
当時は、茜が何を気にしているのか全く分からなかった。
何か大きな問題があるわけでもなく、美咲は毎日楽しそうに学校の時間を過ごしていたからだ。
――あの日の出来事が起こるまでは。
恵麻が何度か声をかけたものの、上の空で適当な返事をするばかりだ。
少し前までの暗い雰囲気が消えたのは嬉しいが、最近の美咲はどこか浮ついていて、親に対する礼儀や態度がおろそかになっている気がした。
少しだけ積もるものがあった恵麻は、軽く注意を促した。
「美咲、お母さんが話しているときは、こっちを向きなさい。もう少し落ち着きなさいよ」
母親としてごく自然な、たわいない注意のつもりだった。
だが、思春期のまっただ中である中学1年生の美咲は、急に不機嫌そうな顔を歪め、バッと立ち上がった。
「もう! 私を子ども扱いしないで!」
「え……?」
「私だってもう、お母さんと同じ大人なんだから!」
そう吐き捨てると、美咲は自分の部屋へ駆け込もうと身を翻した。
最近の母親恵麻は、どこか満たされていた。
恋する茜からもたっぷりと愛情を注がれ、一人娘の美咲も以前よりずっと明るく、イキイキとした表情を見せるようになっていた。
家庭の中は、温かな空気に包まれている。
――だが、ふと脳裏によみがえる言葉があった。
数週間前、茜から言われたのだ。
『美咲ちゃんの態度が明るくていいんだけどさ、ちょっと気になってる部分があるんだよね。僕から指摘してもいいんだけど、まずは母親であるあなたが話してみては?』
当時は、茜が何を気にしているのか全く分からなかった。
何か大きな問題があるわけでもなく、美咲は毎日楽しそうに学校の時間を過ごしていたからだ。
――あの日の出来事が起こるまでは。
恵麻が何度か声をかけたものの、上の空で適当な返事をするばかりだ。
少し前までの暗い雰囲気が消えたのは嬉しいが、最近の美咲はどこか浮ついていて、親に対する礼儀や態度がおろそかになっている気がした。
少しだけ積もるものがあった恵麻は、軽く注意を促した。
「美咲、お母さんが話しているときは、こっちを向きなさい。もう少し落ち着きなさいよ」
母親としてごく自然な、たわいない注意のつもりだった。
だが、思春期のまっただ中である中学1年生の美咲は、急に不機嫌そうな顔を歪め、バッと立ち上がった。
「もう! 私を子ども扱いしないで!」
「え……?」
「私だってもう、お母さんと同じ大人なんだから!」
そう吐き捨てると、美咲は自分の部屋へ駆け込もうと身を翻した。

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