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父に刻印された身体
第4章 父の瞳に火を灯す夜
「あのな、梨亜……」
重たい空気のなか、絞り出された父の声は、掠れて掠れて仕方のないものだった。
私は小さく息を止め、父の唇の動きを凝視する。
皮膚の下で、心臓が爆発しそうなほどの音を立てて波打っていた。
この長い沈黙の破滅の果てに何が待っているのか。父の口から出でる一言が、私たちの「親子」という関係の防波堤を完全に突き崩すのだと、体中の細胞が叫んでいた。
「梨亜が、最近……」
父は言葉の破片を慎重につなぎ合わせるように、途切れ途切れに語り始める。
その瞳は私の瞳を捉えようとしながらも、私という存在の持つ熱量に耐えかねたように、泳ぎ、彷徨っていた。
「少し、急に大人っぽくなった、というか……」
消え入るような声は、目の前の私に向けられたものというより、己の中の衝動を必死に抑えつけるための呪文のようだった。
私はあえて相槌すら打たず、ただ濡れた眼差しで父の表情の変化を追いかける。
どんな言葉で、私を「女」として認めてしまうのだろう。
胸の奥で、禁断の領域へ足を踏み入れる高揚感と、二度と戻れないことへの底知れぬ怖れが、狂おしく渦巻いていた。
「その……なんだ。……その、服の格好というか……」
父は喉仏を上下させながら、私の薄いルームウェアから覗く首筋や鎖骨、その下の胸元へと、這うような視線を走らせた。
吸い寄せられ、罪悪感に苛まれて即座に背けられる視線。その一瞬の滞留に、私は甘美で絶対的な手応えを確信していた。
逃れようとしても無駄だ。父は気づいている。そしてもう、ただの父親の仮面を被り続けることなんてできなくなっているのだから。
「別に……変じゃないと思うけど。お父さん」
私はあどけない微笑みを張り付け、どこまでも自然体で答えてみせた。
けれど、胸の鼓動は早鐘のように耳元で鳴り響き、喉の奥は灼けるように乾いていた。
(もっと見て……お父さん。私から目を逸らさないで)
乾いた喉をゆっくりと鳴らしながら、私は父の視線を捕まえようと、静かに胸を張った。
重たい空気のなか、絞り出された父の声は、掠れて掠れて仕方のないものだった。
私は小さく息を止め、父の唇の動きを凝視する。
皮膚の下で、心臓が爆発しそうなほどの音を立てて波打っていた。
この長い沈黙の破滅の果てに何が待っているのか。父の口から出でる一言が、私たちの「親子」という関係の防波堤を完全に突き崩すのだと、体中の細胞が叫んでいた。
「梨亜が、最近……」
父は言葉の破片を慎重につなぎ合わせるように、途切れ途切れに語り始める。
その瞳は私の瞳を捉えようとしながらも、私という存在の持つ熱量に耐えかねたように、泳ぎ、彷徨っていた。
「少し、急に大人っぽくなった、というか……」
消え入るような声は、目の前の私に向けられたものというより、己の中の衝動を必死に抑えつけるための呪文のようだった。
私はあえて相槌すら打たず、ただ濡れた眼差しで父の表情の変化を追いかける。
どんな言葉で、私を「女」として認めてしまうのだろう。
胸の奥で、禁断の領域へ足を踏み入れる高揚感と、二度と戻れないことへの底知れぬ怖れが、狂おしく渦巻いていた。
「その……なんだ。……その、服の格好というか……」
父は喉仏を上下させながら、私の薄いルームウェアから覗く首筋や鎖骨、その下の胸元へと、這うような視線を走らせた。
吸い寄せられ、罪悪感に苛まれて即座に背けられる視線。その一瞬の滞留に、私は甘美で絶対的な手応えを確信していた。
逃れようとしても無駄だ。父は気づいている。そしてもう、ただの父親の仮面を被り続けることなんてできなくなっているのだから。
「別に……変じゃないと思うけど。お父さん」
私はあどけない微笑みを張り付け、どこまでも自然体で答えてみせた。
けれど、胸の鼓動は早鐘のように耳元で鳴り響き、喉の奥は灼けるように乾いていた。
(もっと見て……お父さん。私から目を逸らさないで)
乾いた喉をゆっくりと鳴らしながら、私は父の視線を捕まえようと、静かに胸を張った。

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