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姉枕
第1章 東京……十八歳
一晩で伸びたヒゲのジョリジョリを手の甲で触りながら、僕は深夜バスの停留所まで戻った。
姉さんはまだ来ていなかった。
僕は行きかう人々の邪魔にならないよう歩道の端っこに移動し、ボストンバッグを地面に置いた。それからバッグの口を開いて、姉さんの手紙を取り出した。やっぱり「バスを降りたら、そこにいてね」と書いてある。ここで待っていればいいはずだ。
最近は携帯電話を持つ人も増えているけど、僕は持っていない。中学卒業後、親方ひとりの植木屋で働いている十八歳の僕では、高価な携帯電話はとても買える道具でなかった。
だけど去年から東京に出ている姉さんはもう携帯電話を持っていた。
手紙の最後には、090から始まる携帯番号も記載されていた。
姉さんは僕よりも五歳年上で、いまは二十三歳。杉並区の阿佐谷というところで一人暮らしをしていて、職場はそこから電車を乗り継いで四十分ぐらいの茗荷谷という場所にある小さな出版社で働いているそうだ。
滅多に出社しない社長さんのほかに、オジサンの編集者が二人、オバサンの編集者が一人だけのアットホームな職場だと、前に貰った手紙に書いてあった。
姉さんは昔から本が好きだったから、本を作る会社に就職できて良かったね、と僕は返信したものだ。
もう少し待ってこなかったら、近くの電話BOXから姉さんの携帯電話にかけてみようと考えていると、
「はる!」
かなり注意して、姉さんの姿を探していただけに、僕はしこたま驚いた。
目の前に現われるまで、姉さんだとは気づかなかった。
「姉さん!?」
「よかった~。どこかで迷子になっているんやないかって、心配したで」
声を聞いて、ようやく姉さんだと認識できたぐらいだ。たかが一年会っていないだけなのに、姉さんは弟の僕があ然とするぐらい、綺麗な大人の女性に変貌していた。
髪は相変わらず肩ぐらいの長さだったが、明るい茶色に染めていて、ずっとかけていた眼鏡も見当たらない。
クリクリとした小動物系の瞳も大きくなっていて、どこかエキゾチックに感じた。
目が大きくなったと感じる一方、顔はずいぶんと小さくなっていた。
「あ、うん……姉さん、痩せた?」
開口一番そう口にしてしまうほど、姉さんはすらりとしていた。
ベルトの部分だけが白い黒のワンピースも似合っていた。
姉さんはまだ来ていなかった。
僕は行きかう人々の邪魔にならないよう歩道の端っこに移動し、ボストンバッグを地面に置いた。それからバッグの口を開いて、姉さんの手紙を取り出した。やっぱり「バスを降りたら、そこにいてね」と書いてある。ここで待っていればいいはずだ。
最近は携帯電話を持つ人も増えているけど、僕は持っていない。中学卒業後、親方ひとりの植木屋で働いている十八歳の僕では、高価な携帯電話はとても買える道具でなかった。
だけど去年から東京に出ている姉さんはもう携帯電話を持っていた。
手紙の最後には、090から始まる携帯番号も記載されていた。
姉さんは僕よりも五歳年上で、いまは二十三歳。杉並区の阿佐谷というところで一人暮らしをしていて、職場はそこから電車を乗り継いで四十分ぐらいの茗荷谷という場所にある小さな出版社で働いているそうだ。
滅多に出社しない社長さんのほかに、オジサンの編集者が二人、オバサンの編集者が一人だけのアットホームな職場だと、前に貰った手紙に書いてあった。
姉さんは昔から本が好きだったから、本を作る会社に就職できて良かったね、と僕は返信したものだ。
もう少し待ってこなかったら、近くの電話BOXから姉さんの携帯電話にかけてみようと考えていると、
「はる!」
かなり注意して、姉さんの姿を探していただけに、僕はしこたま驚いた。
目の前に現われるまで、姉さんだとは気づかなかった。
「姉さん!?」
「よかった~。どこかで迷子になっているんやないかって、心配したで」
声を聞いて、ようやく姉さんだと認識できたぐらいだ。たかが一年会っていないだけなのに、姉さんは弟の僕があ然とするぐらい、綺麗な大人の女性に変貌していた。
髪は相変わらず肩ぐらいの長さだったが、明るい茶色に染めていて、ずっとかけていた眼鏡も見当たらない。
クリクリとした小動物系の瞳も大きくなっていて、どこかエキゾチックに感じた。
目が大きくなったと感じる一方、顔はずいぶんと小さくなっていた。
「あ、うん……姉さん、痩せた?」
開口一番そう口にしてしまうほど、姉さんはすらりとしていた。
ベルトの部分だけが白い黒のワンピースも似合っていた。

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