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第8章 弟の過去
松林が月明かりを遮らなくても、雲が月を覆って薄暗い。

更に、窓にはスモークが貼られている。

とはいえ、窓の外に向けて大きく足を開く格好は耐えられない程に恥ずかしい。


「やだっ…恥ずかしい!」

早急に閉じようと力を込めた両足を、それを上回る力で琉に開かれ押さえられる。


そのまま身体を持ち上げられて落とされれば、

「あ、ああっ‼︎ 」

繋がったままのそこから痺れるような熱が昇ってくる。


「だっ…ダメぇ……み、られちゃっ…」

犬の散歩をしていた人物の存在が頭を過り、愛里咲は揺れる視線の中にその影を探す。


「あっ、はンッ…ぁあ、はぁっ…」


ホンの一瞬、雲間が切れて差した月明かり。

(居た……)

離れた所にいたその影は、こちらに背中を向けて歩いていた。


「は、ああぁぁぁ……」

気の抜けた声と共に、身体からも力が抜けていく。


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