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第10章 俺の弟は…
「何で芙美がここに⁈ 」

渚は、思った疑問をそのまま芙美へとぶつけた。


「うちの親は放任だから放ってたんだけどぉ……妹がストーカーしてんだよね〜。姉としてぇ一応様子見に来たわけぇ」


”妹がストーカー”

芙美のその言葉に驚いた顔で見つめ合った翔と渚。

だが、そう言った割りに、芙美は場違いに明るくケラケラと笑っていた。


(昔から、他人の迷惑とか気持ちとか考慮出来ない子だったな……)

良く言えば、自分の気持ちに実直。

芙美のそんな性格は、時に他人を傷付ける。

高校時代の愛里咲の気持ちを思い、

「……そうなんだ。妹さん、この近くに居るんだ?探すの大変そうだけど頑張ってね」

渚はそう言って、翔の腕を引いて歩き出す。


「あーっ、待って待って!いろいろ聞きたい! ねぇ、うち来ない?親も会いたがってるから」

よりによって、翔の腕に絡めた渚の腕に芙美の腕が無遠慮に絡み付く。


(───絶対イヤ‼︎ )

思わず芙美を睨みつけたと同時に、つい零れそうになったその一言を無理矢理飲み込み、

「ごめん、用事があって……離してくれる?」

静かにそう言った渚は、ヘンテコな三角関係のように絡み合った3本の腕を見つめた。


「えー! 私も一緒に行ったらダメ?」

ブンブンと芙美が腕を振れば、釣られて翔と渚の腕も大きく揺らされる。


「デートの邪魔するの?」

苛立ちを隠せずに冷たく言い放った言葉にも、

「えー、彼氏さん、渚の昔の話とか聞きたくないですか?ね?一緒していい?」

芙美が怯む様子は微塵も感じられない。


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