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第13章 俺の周りの企み
ガチャッ…

玄関ドアの音に、

「おかえり〜!」

子供か犬かとツッコミたくなる程の満面の笑みで愛里咲が出迎えてくれる。

それにすっかり慣れたのか、愛里咲が1人で苦しんでいた時期に出迎えがなかった時は寂しくすら感じた。


「……ただいま」

そう答えれば、愛里咲はまた嬉しそうに笑う。

そして、

「遅かったね?」

少しだけ首を傾げた。


駐車場に着いたタイミングで愛里咲から着信があった。

たわいない会話だったが、その時に駐車場に居ると伝えていたから待っていたのだろう。

エントランスで芙由に会い、

そして、

”愛里咲には内緒だよ!”

エレベーターでの渚との会話を思い出す。


(他人のセクハラ被害を救いたいだとか……渚もお人好しだな)

首を傾げる愛里咲に、何でもないと答えて玄関を上がる琉。


「……ん?」

その手に、靴箱の上にあった郵便物が触れた。


「あ!ポストから出してそのまま忘れてた!」

エントランスにあるポスト。

そこから部屋まで郵便物を運んだ愛里咲だが、部屋に入った途端に泣き出した陽向の世話に追われそのまま忘れていた。


郵便物を手に取り、パラパラ捲りながらリビングへと向かう琉。

一番下にあった不審者情報のチラシにその手が止まった。


チラシの中央に乗せられた白黒の写真。

エントランスを伺う不審者と言われる人物。

その背格好が白取に酷似していた。


グシャ…

琉の手の中で、小さく丸められたそのチラシ。


「何?」

不思議そうにその手を覗き込む愛里咲。


「いや…なんか宗教の勧誘」

「そっか。あ、御飯食べるよね?支度してくるね」

そう言ってキッチンへと向かう愛里咲。

その背を見送る琉は、これ以上小さくならないそのチラシを握る拳に更に力を込める。


……思い出させたくもない。

─────二度と…

もう二度とあんな思いはさせない……


小さく強く握りつぶしたチラシを、

琉はゴミ箱へと投げ捨てた。



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