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近くて甘い
第59章 運命の悪戯
まずい…絶対また恥ずかしいことを言おうとしてる…っ



「こいつの事は年がら年中抱いているっ…!

避妊していても、いつ妊娠してもおかしくない状況の中、たまたまこの時期になっただけだっ…!
それにこいつは俺の婚約者だっ!俺の子を妊娠して何が悪いっ!」




…………最悪…




「年がら年中…」


「…あんたはそういうどうでもいいところに反応しないの」



亮くんがポツリと呟いた言葉に梨子が諭すようにいうと、なぜか酒田さんもギクッと身体を震わせた。




「…………開き直るとはまさにこの事ですね…」




「っ……か、要さん…」





呆れたように言葉を吐いた要さんの事を呼ぶと、要さんははぁっとため息をついて私の方を見た。




「……あの…私っ…勉強を教えて下さった要さんにも本当に申し訳ないと思っています」



「いえいえ、そんなことは何も気にしていないですし、お子さんが出来たことは本当におめでたいと思っていますよ?ただ、社長には言いたいことがあっただけです」



「お前なぁっ…人の心配していないでドジ女の世話をしていたらどうだ!」



「彼女には田部加奈子という名前があります」


また言い争いになりそうになった二人を酒田さんがまぁまぁ、と言って止めた。




「………私のしたかったことは、光瑠さんのためで…。進学は出来ないけど、通訳の勉強は自分で頑張れば時間は掛かってしまうだろうけど、出来ると思うし…」



しんと静まり返った中で私は要さんに微笑んだ。





「自分勝手ですけど…でも、私の夢は進学することじゃなくて通訳として光瑠さんを支えることなので…夢が破れたとは思っていません…。

それに、今は光瑠さんとの間に、掛け替えのない存在が出来て…


本当に幸せです…」




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