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近くて甘い
第27章 キスの責任
「…分かっていますよ」


痛いほど…


グッと拳を握った要のジャケットの裾が、ポケットにすれて、かすかに音を立てた。



「すまない…」


「っ……」



この前の真希の熱い身体も、濡れた瞳も、

唇の感覚も───…


いつだって思い出せるというのに、


どうして社長は罪悪感を感じさせるような事を言うのか…





「社長…」


「なんだ…」


「あなたが、もし、真希さんを譲ってくれたとしても…」




その先は声がうまく出ない。


要の頭の中を駆け巡ったのは…



─────────抱いてっ…


─────────ひかるさんっ…



譲られたところで…彼女の心は僕にはない…





「関根…」



俯いた要の肩を光瑠は優しく触れた。




「…何でもありません」


ニッコリと笑った要を光瑠は揺れる瞳で見つめた。



同じ人を愛してしまったことの宿命…


それは思っていたよりも二人には重い。



沈黙が続く中で、ドアの方から物音がして二人は後ろを振り返った。



「すみません…っ…ノックしようとしたんですけど、扉が開いてましてっ…」



動揺したように見せる香純が書類を抱えながら、光瑠と要の事を見つめた。



「ったく…またお前か…」
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