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近くて甘い
第27章 キスの責任
最近何度も顔を見る香純の姿に、光瑠はうんざりしたように、言葉を発した。



香純の登場で空気の変わった社長室に、要が大きく息を吸った。




「では…これで…」


「───副社長も大変ですね…」



「は?」




去り際に意味深に声を掛けられ、要は眉をしかめて、香純に振り返った。




「それは…どういう意味かな?」



この社員…どこかで見たな…



記憶を探りながら、要が笑顔で香純に話掛けると、香純は、微笑みながら要に向き直った。




「社員がみんな噂していますから…」


「おい、何の話だ」



中々本題に入らない事にイラついた光瑠は、香純の後ろから声を掛けた。




ニヤリと香純の口角が上がる。


要はそれを見逃さなかった。




「どこから、こんな嘘の情報が流れたのか分かりませんが…

昨日、副社長と社長の婚約者の真希さんが、会議室で唇を重ねてたとかいう噂が…」



「っ…!!」




目を見開いた要。


そして、身体を膠着させた光瑠は、しばらくそのままでいたあと、フッと笑って、香純に近付いた。



「……お前……以前の事といい…本当にいい加減にしろ」


「そんなっ…私はっ…」



涙目で振り返った香純は、上目使いで光瑠を見上げた。


この前…そうだ…この前、真希さんの様子がおかしかった日…社長の後ろにいたのが彼女だ。



記憶の符合に要はゴクリとつばを飲んだ。



光瑠は、香純を見つめながら、考えを巡らす…


真希は…
真希はそんなことは言っていなかった…
それに…

関根はそんなことをするやつではない…



落ち着こうとしても、心臓は動揺で正直に波打つ。
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