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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第12章 泉~遠い昔の記憶
その場に10分近くいただろうか。

遂に耐え切れず、私は早足で階段を昇った。

鉄製の粗末な階段に響く私の足音は、荒木の部屋にまで届くはずだ。

樋口、わざわざ来たのかよ!

私は、たばこをくわえた荒木がそんな風に飛び出してくるのを願った。

だが、ドアの前まで来ても、そこは固く閉ざされたままだった。

ノックをする勇気が湧き上がってこない。

私は誰かいるのか確認しようと、ついドアノブに手を伸ばした。

それはあっけなく回り、ドアがかちゃりと開く。

いつものように荒木の母親はいるんだ・・・・。

そう思った瞬間、私は無性に彼女の顔が見たくなった。

「おばさん、いますか。樋口です」

すぐそこにいるはずの母親に向かって、私は小さな声を発した。

だが、返事はない。

私は、無意識のうちに耳を澄ました。

何かくぐもった声のような音が部屋の奥から聞こえてくる。

足元を見れば、大人用の革靴が一足置いてある。

あいつだ・・・・

あの時感じた、怒りと興奮が入り混じった熱い感情が蘇ってくる。

学校のことなど、もうどうでもよかった。

私は室内に忍び込み、そっとドアを閉じた。

台所、そしてすぐそこにある小さなテーブルには誰もいない。

ふすまが固く閉められている。

向こう側はグッピーの水槽がある部屋だ。

そのとき、私は足元に何か落ちていることに気付いた。

荒木の母親がよく着ていた白色のブラウスだった。
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