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10年目の恋
第4章 月夜の恋
無理やり連れてこられたのは
都内でも一流ホテルのセミスィートだった。
なんで?なんで?

すご~い!夜景がきれい~。わぁ~贅沢ぅ~。

「で?」
「犬とちゅーしたってなんだよ」
「犬だよ。犬。徹が心配するようなことじゃないって」
「・・・・」
「何?犬にヤキモチ妬いちゃった?」

あっはっはっはと
笑い出すあたしに乗ってこない。
とおる?

「ヤキモチ妬いちゃおかしいかよ?」
はぁ?犬に?
いや本当は人間だけどさ。
いやその前に10年前の徹とだけどね?

「くそ。こんなつもりじゃなかったのに」
ん?

徹は成田からそのまま来たらしい。
キャリーケースをガサゴソと探り出し
あった。と小さな袋をあたしの目の前に差し出した。

これ・・・・
この包装紙・・・・

「モニッケンダム?」

徹はニヤッと笑った。

「なんで疑問形なんだよ。正真正銘のモニッケンダムだよ」
なんで?なんで?

あたしは震える指先で包をあけた。

かなり前。翻訳の仕事の映画の中で
主人公が彼氏にモニッケンダムの婚約指輪をもらっていた。

翻訳するときに背景を知りたくて
モニッケンダムを調べた。

イギリスの有名なジュエリーショップでその製品の質の高さが売りだった。

あたしはなんの気なしに「いいな」と
徹に言ったんだっけ・・・・




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