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Last Kiss
第2章 10年前に死んだヒト
ロンのところに戻ろうとした私の足が凍りついた。
「…あなたは…だれ?」
私が見たのは、ロンの隣に立っている白い人物。ちゃんと人って分かるけど、…人ではないことは…分かっている…
『…目、合ってるな』
「……いつも、おかえりって言ったのは…」
『俺だよ、…俺は河田郁人、10年前に死んだ幽霊……かなっ?』
そうおどけながら言う幽霊の存在を私は認めたいようで認めたくなかった。
気付けば意識を失っていて、目が覚めた時は朝だった。
何も変わらず私は用意をして、家を出る。
でも変わったことが、ひとつあった。
私が家を出る時に聞こえた『いってらっしゃい』の声
私は小さく…行ってきますと返した。
この出会いが神の選択だったこと、私は知る由もない。
でも、確実に今の私にとって人生の転機となるであろうことは言うまでもなかった。