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梨華との秘密
第9章 乱れ咲く縄華
 やべっ、と思ったがなに食わぬ顔をして課長のデスクへ向かった。


「昨日は御苦労様。上手くやったみたいだね。」


 ウィンクしながら課長が、嬉しそうに言ってきたが、俺は、ヤバイ臭いかいだような気がしたが、


「ありがとうございます。なんとか無事に任務を果たしました。で、課長、本当の用はなんですか?」


 警戒心を露にした俺の質問に、面白そうな顔で、


「で、本当の話しは来月のことなんだけど、明日から君は休みに入るだろ?引き継ぎをしなきゃならんことがあるかなって、思ってね。」


「あっ、引き継ぎですか?後任は決まってるんなら、休み明けか来月に来ますけど?大した内容はないですからね。」


 どうせ窓際なんだから、引き継ぎなんて、あるわけないだろ!


「そうかぁ、仕方ないわな。君には仕事をさせるなって、言われてたからな。それより、美澤女史が、ご機嫌なんだがなんかあったのかい?」


「あっ、いや、常務の婚約者と意気投合したみたいで、それでじゃないですか?」


 やべぇ、調教しましたなんて、言えるわけねぇだろ!
 しかし、課長は納得したみたいで、じゃぁと、手を振り俺を解放してくれた。
 自分のデスクに戻ると、書類が積まれていた。
 書類のファイルを開くと、メモが一枚挟まれていた。


『お話があります。この書類をもってコピーのところに来て下さい。恵梨香。』


 美澤恵梨香からだった。
 俺が恵梨香の方をチラッと確めると、彼女が軽くうなずいた。
 そのファイルをつかみ、


「コピーしてくるわ。後を頼むね。」


 隣の机の部下に言いながら立ち上がり、コピー機のコーナーへ向かった。


「係長、ごめんなさい、お呼び立てして。」


「構わないよ、美澤君。どうしたね?」


 俺がコピー機を操作し始めると、恵梨香が横に来て身体を触れ合うほど近付いてきて、回りを気にしながら俺を係長と呼んだ。


「はい、あの、少しで良いんですが、今日、ダメでしょうか?」


 やはり、そうきたかと思ったが、おくびにも出さずに、


「今日かい、そうだな?少し待てるかい?十一時になったら、時間がとれるから、その時でいいかい?」


「えっ、十一時ですか?はい、ありがとうございます。待ってます。」


 恵梨香の顔が喜びに輝いた。
 サドの俺が彼女へのイタズラを思い付かせた。
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