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梨華との秘密
第10章 聖夜の宴
 こいつ知ってやがる。
 まずいな、いや、面白いかもしれんな?


「あらま、それは素晴らしいですね。その社員、表彰してやりたいですねぇ。名前わかってるんですか?」


 我ながらしょうもない事を聞いたなと思ったが、ニヤリとしながら課長の目が嬉しそうに、笑っているように変わった。


「うん、大体は聞いてる。面接に立ち会ったからね。ふふ、どうやら、彼女の恩人は意外に近くにいるみたいだからね。」


 思わせ振りに、俺に片目をつぶると席に戻るように手で合図した
 やられた、知られちまってる。
 まあ、良いかなどと考えながら机に戻った。
 なるほどね、知ってて採用しててんや。
 自分の尻は自分で拭けってか、やれやれやな。
 なんて考えていると、終業の時間が迫ってきていた。
 梨華と三奈にメールを返していると、背中をトントンと軽く叩かれ、振り向くと片山ミキがたっていた。


「係長、私も倉敷なんですか?さっき課長にきいたんですけど?」


 かなり驚いたが、なるべく顔に出ないように努力したが無理だった。


「うん、そうみたいだね。顔合わせは上の小会議室だからね。そうだ、清板君を知ってるかい?彼も倉敷に転勤なんだ。」


 動揺したまま、片山ミキに聞いていた。


「清板君?あっ、知ってます。う~ん、イケメンで頭がキレて、女性社員の評判は良い見たいですよ。仕事が出来るのに、なにかやったのかな?」


「仕事が、出来すぎで、頭がキレすぎたんだよ。片山君みたいに、誰かさんに嫌われたんだよ。」


 俺の顔を信じられないと言う表情で、見ながら、


「私が、嫌われたんですか?誰に?」


 一瞬戸惑ったような顔をしたが、すぐに、



「まさか、松川係長じゃないですよね?」


「ザーンネン、違うよ、ミキちゃん。大きくなったね。」


「えっ?どうして?」


 バレたかって表情と同時に、彼女の中で様々な感情が入り乱れ、爆発していた。


「うん、課長にね、聞いたよ。素直に言ってくれれば良かったのに。気にしてたんだよ、お母さんと君のことをね。」


 一瞬どうしようか迷っているのが見えた。


「係長、ごめんなさい。言えなくて、でも、見てるだけで幸せだった。お父さんの働いてる姿、ステキだった。お母さんも喜んでるわ。」


 思わず抱き締めそうになったがなんとかしのいだ。
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